【ニューヨーク=山下茂行】6日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均は午前10時(日本時間午後11時)過ぎに330ドル超下げ、1万ドルの大台を割り込んだ。ダウ平均が取引時間中に1万ドル台を下回るのは2004年10月以来、約4年ぶり。金融安定化法が成立したが、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)に端を発した金融不安や景気低迷はむしろ深刻化しているとの懸念が台頭。欧州、アジアの連鎖的な株安も重なって、市場では悲観的な見方が急速に強まっている。
07年10月9日に付けた史上最高値(1万4164ドル53セント)から約1年でダウ平均は約3割安と大幅に下落した。
欧州で金融機関の破綻や経営悪化が続出、ドイツが預金の全額保護に踏み込むなど米国発の金融不安がグローバルに飛び火し始めたことが警戒されている。
米でも貯蓄金融機関(S&L)最大手ワシントン・ミューチュアルなどを含め、今年に入って銀行の破綻が多発。住宅ローン債権の焦げ付きなどで体力が消耗、株価が10ドル台を割り込んでいる地銀なども多く、今後も「中小金融機関の大量破綻が避けられない」(米著名投資家ウィルバー・ロス氏)といった声が途切れない。
このため信用リスクを警戒して銀行間取引市場はマヒ状態に陥っており、経営余力が乏しいとみられた金融機関の資金繰りは一段と厳しくなっているもよう。金融安定化法は成立したものの、むしろ金融不安は強まっているとみた投資家らが保有株の処分売りを急いでいる。
金融機関が貸し渋りの動きを強め、景気悪化も一段と鮮明になっている。資金コストの上昇などから企業が設備投資などを抑制する一方で、雇用調整にも着手しており、9月の米雇用統計では雇用者数の減少幅が5年半ぶりの水準まで拡大。住宅・株価の下落による逆資産効果も重なり、米経済の柱である個人消費も冷え込んでいる。市場では「金融安定化法案が通過しても、米景気の悪化は当面続く」(メリルリンチのエコノミスト、ローゼンバーグ氏)との悲観論が強まっている。(06日 23:49)