社説

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

社説:政策金融改革 所管官庁の食い物にするな

 国の実施する中小・零細企業対策や経済対策などを担う新政策金融機関が1日発足した。国民生活、中小企業、農林漁業の3金融公庫と国際協力銀行(JBIC)の国際金融部門(旧日本輸出入銀行)が統合した日本政策金融公庫である。

 政策金融改革は小泉改革の小さな政府に向けた主要施策であり、新組織はその目玉だ。民間でできることは民間にということで、政策金融の対象分野や規模を絞り込み、株式会社化で民間手法を大幅に導入する。

 政策金融の主な原資である財政投融資計画は08年度当初予算で約13兆9000億円と、ピーク時の3分の1の規模まで減っている。そうした中でも、中小企業対策や資源確保など政策性の高い分野では、財政投融資の役割は残る。

 ただ、一般国債とは異なるとはいえ、政策金融の原資である財投債も国の借金である。国全体の財政状況を健全化し、機動性を回復するためにも、所管官庁は財投要求の策定に際しては、ゼロベースで臨むべきだ。同時に、守備範囲は明確にし、民業圧迫にならない配慮が必要だ。

 これまで、政策金融機関が所管官庁の天下り先だった。政策金融改革ではそのことも問われていたはずだ。それにしては、政策金融公庫の役員のほとんどは所管官庁出身者で占められており、従来とどこが違うのか、疑問を抱かざるを得ない。なかでも、財務省は突出している。民間出身の安居祥策総裁(前中小企業金融公庫総裁)の下に、副総裁として細川興一元事務次官と渡辺博史前財務官を送り込んだ。渡辺副総裁は国際部門を統括する。

 経済産業省や農林水産省からは事務次官クラスのOBが入っていない中で、財務省の政策金融公庫支配批判が出てもおかしくない。

 民営化される日本政策投資銀行でも元伊藤忠商事会長の室伏稔社長の下に、元財務事務次官の藤井秀人副社長が控えている。

 政府は、早期に、今後の人事に際しては、民間人の登用を主にし、天下りは大幅に制限するなどの措置を取るべきだ。

 政策金融公庫の業務は大きく国内部門、国際部門に分かれる。国内部門も中小、国民、農林漁業の3機関の業務が別々に実施される。これも問題である。単一の政策金融機関は政策金融改革を推進した小泉純一郎元首相-竹中平蔵元経済財政担当相の一存で決まった。

 ただ、国際部門の独立性が高いこの組織形態では、国際金融部門再分離の動きも出かねない。国際部門はJBICの名称を使うが、政策金融公庫全体の海外業務も担当している。そのことを明確にしなければならない。

 政策金融改革は間違いなく必要だ。そのためにも、政策金融公庫を所管官庁の天下り先や食い物にしてはならない。

毎日新聞 2008年10月6日 東京朝刊

社説 アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報