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【主張】がん生存率 データ公表病院を増やせ
厚生労働省研究班が、がんの治療5年後の「生存率」を集計し、インターネット上に公表した。安易な病院ランキングも氾濫(はんらん)するなか、信頼できる情報を出すことは大きな意味がある。
しかし今回のデータ提供は国公立のがん専門病院がほとんどで、一部は病院名を公表しなかった。情報を提供する病院を増やすとともに、データも基準を統一し、精度を上げるなどの改善が今後の課題となろう。
研究班は平成11年と12年の2年間に初めて入院治療を受けた患者について「全国がん(成人病)センター協議会」加盟の32病院のうち26施設からデータの提供を受けた。症例数100以上で、生死を把握できた追跡率が9割を超えるなど基準を満たした病院について生存率を求めた。
その結果、算出できた病院数は胃がん20、肺21、乳18、大腸17、子宮頸(けい)8で、それぞれ1〜4病院がデータ不足でほかの病院との比較ができないと判断され、病院名を出さなかった。実名を公表したのは19病院だった。
生存率公表で病院名を明らかにできれば、患者は治療先を選びやすくなる。その半面、落とし穴もある。生存率はがん患者の重症度に大きく左右され、データの精度が低いと誤差も生じるからだ。
研究班主任研究者の猿木信裕・群馬県立がんセンター手術部長は「今回の生存率は病院の優劣をそのまま示すものではない。参考資料の一つと考えてほしい」と説明している。その通りだろう。
がんは30年ほど前から死因の第1位となり、死者は年間30万人を超える。国民の3人に1人はがんで死亡している。国家戦略としての対策が求められる。
昨年4月には、がん研究の推進と治療技術の向上を基本理念に掲げた「がん対策基本法」が施行された。その2カ月後の6月には「がん対策推進基本計画」が閣議決定されている。
この基本計画で重点的課題の一つに挙げられたのが「がん登録」だ。患者の罹患(りかん)状況を集めて分析するシステムで、生存率も登録データから算出される。地方自治体や病院、学会が協力して精度の高いデータをまとめるシステムを築き上げる必要がある。
がんの予防には喫煙率を減らすことはもちろん、検診による早期発見が重要なカギを握ることも忘れてはならない。