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2008年10月6日

◎高岡の「利長くん」 ブームに乗って盛り上げたい

 「ゆるキャラ」ブームの火付け役となった「ひこにゃん」を生んだ滋賀県彦根市で今月 二十五、二十六日に開かれる「ゆるキャラまつり」に、加賀藩二代藩主前田利長をモデルにした高岡開町四百年事業のマスコットキャラクター「利長くん」が参加することになった。このイベントでは、大混雑による事故を防ぐために、主催者が急きょ、会場や催しの内容などの変更を余儀なくされたというから、ブームの過熱ぶりがうかがえ、「利長くん」の知名度アップと加賀藩文化の発信に期待がかかる。

 この際だから、金沢もブームに乗って「利長くん」の売り出しに一役買うことを考えて みてはどうか。たとえば、金沢にも前田家にちなんだ「ゆるキャラ」を誕生させ、高岡との相乗効果を狙うのも面白い。利長の父である藩祖利家や母のまつ、弟の三代藩主利常やその妻の珠姫など、モデルになりそうな人物には事欠かない。金沢のイベントや観光キャンペーンなどに「利長くん」を積極的に招くのも一案である。

 利長は、金沢と高岡にとっての「共通の先祖」とでも言うべき存在であり、現代におい ても両市の交流の懸け橋の役割を果たしている。「利長くん」のPR、ひいては高岡開町四百年事業の盛り上げに金沢が手を貸しても違和感はなく、金沢の発信にもプラスになるはずだ。

 見る人にほのぼのとした印象を与える「ゆるキャラ」は、ここ数年、自治体イベントな どのPR用に盛んに制作されている。彦根では、「ひこにゃん」フィーバーのおかげで彦根城の昨年度の入場者数が前年度比三十二万人増の約八十五万人に達したことからも分かるように、当たればその効果は大きい。

 彦根市担当者によると、「ひこにゃん」の場合、恒例の彦根城天守閣のすす払いに参加 した様子がメディアに取り上げられたことなどが、全国区の人気を博するきっかけになったという。キャラクターを人気者に育てるためには人々の関心を集める仕掛けが欠かせない。金沢が高岡の取り組みに「便乗」すれば、格好の話題づくりにもなるのではないか。

◎「後期医療」見直し 青写真の提示が根本だ

 後期高齢者医療制度が今年四月から導入されたとたん、年金からの保険料天引きへの反 発をはじめとして制度無用論まで、さまざまな批判が噴き出し、政府は見直しに取り組むことになった。が、検討に一年ほどかけるそうだから、総選挙の結果次第でどうなるか分からないという不透明さがある。しかし、与野党にはそのようなことに左右されず、あるべき姿を求めて見直してもらいたいものだ。

 後期高齢者医療制度が考え出されたのは高齢人口の増加に加え、その医療費の右肩上が りが続くため、高齢者にも負担してもらうということがその基本にある。本質的には「医療費抑制策」だとする見方もあり、それも否定できない。

 私たちはこの制度が発足したとき、医療に限らず、何事にせよ、個々人が負担を感じる 仕組みを制度にはめ込まないと、かからないと損するような気になり、ブレーキが効かなくなるとして、きめ細かな合理的配慮に基づく抑制策の必要を指摘した。

 医療機関が経営上の必要もあって高齢者をも検査漬けにしたり、医療技術の進歩で「長 生きさせられる」ということも起きている。すなわち、管から胃に栄養を入れる「胃瘻(いろう)」など人工栄養法の発達で寝たきりでも長生きできるようになったし、腎臓の機能が失われても透析で寿命が延びたことなどが高齢者の医療費を押し上げているのである。

 こうした根本的な問題と真っすぐに向き合い、高齢者に対する医療のあり方を見直し、 医療の水準を下げるのか、あるいは負担を増やすのか、その選択を国民に問わねばならなくなったのではないのか。それをせずに、最も弱い高齢者に制度を押しつけているといった関係者の批判があるように、政府は高齢者医療についての、しっかりした考えを持っていないようにみえるのである。

 医学の進歩の方向はどうあるのが望ましいのか。そうした問題意識に基づいて青写真を いろいろつくり、それを国民に提示して選択を求め、制度への理解を得るのが筋である。


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