●庶民が怒り、議員も金融救済法案に賛成できず
米下院による「金融安定化法案」の否決が世界同時株安の引き金を引いた。こうなることは下院議員だって分かっていたろうが、米国民の「億万長者を何で税金で救済する必要があるの?」という怒りを無視できなかったからだ。
確かに、CEO(最高経営責任者)たちの報酬は目が飛び出るほどベラボーだ。米フォーブス誌が毎年行っている「米大企業のCEO報酬ランキング」によれば、金融大手のCEOの2007年の報酬額(給与、ボーナス、権利が確定した株式供与、行使されたストックオプションなどの合計金額)は表のようになっている。
カントリーワイドは、サブプライムローン問題の“元凶”といってもいい住宅ローン最大手企業だ。経営破綻の危機に陥り、今年7月、バンク・オブ・アメリカに買収された。そんな経営状態だったのに、113億円ももらっていた創業者のアンジェロ・モジロCEO(当時)は、米議会から総スカンに遭い、私財提供まで求められた。結局、懐に入るはずだった株の売却益と退職金40億円の権利を放棄させられた。そりゃ当然だろう。
G・サックスのロイド・ブランクファインCEOは、金融業界では「笑顔を絶やさないフレンドリーな人物」と評されているらしい。昨年末、ボーナスだけで77億円を手にし、〈米金融機関トップの報酬額で史上最高額を更新〉と米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに華々しく報じられた。リーマンを潰したリチャード・ファルドCEOの報酬も巨額だ。「ワンマンで傲慢(ごうまん)」といわれながらも、15年間CEOとして君臨し、毎年数十億円を手にしてきた。
「高額報酬があるから過大なリスクを取ってしまったことが、今回の金融危機の背景です。CEOはそれをチェックしなければならないのに、業績がよければ自分のボーナスも増えるので、歯止めが利かなくなってしまったのです」(経済評論家・山崎元氏)
否決された「金融安定化法案」をまとめたポールソン財務長官はG・サックスの前CEOだ。彼も巨額報酬をガッチリもらった口だろう。そう考えると、否決されても自業自得というものだ。
〈2007年のCEO報酬〉
●カントリーワイド/113億1240万円
●ゴールドマン・サックス/81億920万円
●リーマン・ブラザーズ/79億900万円
●JPモルガン・チェース/22億7480万円
●バンク・オブ・アメリカ/22億1430万円
●モルガン・スタンレー/19億4150万円
●メリルリンチ/17億3250万円
●シティグループ/2750万円
(1ドル=110円で換算)
(日刊ゲンダイ2008年10月1日掲載)