日教組組織率と学力:補遺

日教組組織率と学力の補遺。

朝日新聞2008-09-27落伍弟子さんの日教組組織率と全国学力テストの成績で,阿比留瑠比さんの全国学力テスト結果と日教組組織率に関連はあるのかないのかの(おそらく恣意的に選ばれた15道府県の)データに基づいて日教組組織率と全国学力テスト結果との関連を調べてみた方がおられたことを知った。それによれば,日教組組織率との相関係数は,小学校は-0.14,中学校は-0.49とのこと[追記:学力テスト結果は順位なので,負の相関があるということは,組織率が高いほど成績が良いことを示している]。中学校について下に私の再計算の結果を載せておくが,Pearsonについてはr=-0.50だがp=0.057で有意ではない。そもそも恣意的に選んだ15道府県のデータでは何も言えない。

また,中山大臣 「日教組強いと学力低い」は本当か?は,ぼやきくっくり | 再録「報道特集」日教組徹底研究から読み取った全都道府県の組織率(3分類)との関係を調べている。この表では違いはまったくあまりなさそうである。特に中学校では日教組組織率が最大の階級が学力テストの点数も最大である。

ついでに,朝日新聞については,asahi.comではなぜ中3数学Aについて調べているのかわからなかったが,聞蔵IIを見たところ,「〈注〉科目は1位と最下位の県の得点差が最も大きいものを選びました」とのこと。これは統計解析でやってはいけないことの一つで,一つを選ぶなら,中を見ないで総合得点を使うべきである。

さらに,同じ朝日でも,うちに届いた27日朝刊紙面はやや違うことに気づいた。ネットや聞蔵IIでは「中山説」に合う6県と合わない7県を図示しているだけだが,うちに届いた紙面ではこれら13道府県の組織率を数字で挙げている(図)。いずれにせよ,本当に証明したいなら,恣意的に13道府県を選ぶのではなく,全都道府県のデータを使うべきである。そして,このような図ではなく,散布図を描くべきである。

"","日教組組織率","小学校順位","中学校順位"
"北海道",51,46,44
"岩手県",41,10,39
"秋田県",51,1,3
"神奈川県",61,27,34
"新潟県",68,17,22
"山梨県",81,29,20
"静岡県",61,14,7
"愛知県",60,22,9
"三重県",80,42,29
"大阪府",29,45,45
"兵庫県",58,23,27
"岡山県",60,39,38
"福岡県",30,38,40
"大分県",65,44,32
"沖縄県",35,47,47
# 「x割超」は 10x+1 とした
# 「x割弱」は 10x-1 とした
# 「x割近く」は 10x-2 とした
> cor.test(日教組組織率,中学校順位)
...
t = -2.0851, df = 13, p-value = 0.05734
...
> cor.test(日教組組織率,中学校順位,method="kendall")
...
z = -2.3842, p-value = 0.01712
...
   タイのため正確な p 値を計算することができません
> cor.test(日教組組織率,中学校順位,method="spearman")
...
S = 898.909, p-value = 0.01682
...
   タイのため正確な p 値を計算することができません

私は根っからの文系

私は根っからの文系人間ですので偉そうなことは言えませんが、アカデミズムの世界では、統計学は数学よりも下に見られているようです。しかし、これだけ統計が活用(濫用?)されている現状を見ると、経済学と同じくらい重視されてよいし、統計リテラシーの一般への普及ということができればいいのにと痛感します。

ノンパラだと有意に

ノンパラだと有意に見えますが。
全都道府県のデータが欲しいですね。

Re: ノンパラだと有意に

そうですね。タイがあるのでp値は不正確とのことですが,p<.05であることは確実のようです。

念のためですが,負の相関のように見えますが,順位は小さいほうが成績が高いので,日教組組織率が高いほど成績は良いということが証明されたわけです。 :-)

ついでにプロット

plot(日教組組織率,中学校順位,ylim=c(47,1))

ついでのついで

朝日新聞の13道府県組織率データと,平成20年度全国学力・学習状況調査 調査結果資料【 都道府県別 】の中学校データからコピペした4科目正答率の合計との散布図。

散布図

   組織率 正答率合計
北海道 50 237.9
岩手県 40 238.8
秋田県 50 270.2
富山県 50 270.1
福井県 90 276.3
静岡県 70 259.2
愛知県 60 256.6
大阪府 30 231.4
香川県  1 259.0
高知県 10 220.7
大分県 60 242.9
宮崎県 10 251.6
沖縄県 40 209.4

日教組の県別組織率って

文部科学省のホームページ
教職員の組織する職員団体の実態調査(届出統計)
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/index34.htm
には,全国集計しかないのですよ。新聞社はどこで調べたのかなぁ?
「公表資料:毎年12月頃 教育委員会月報」
ってかいてあるから,第一法規出版「教育委員会月報」を取り寄せると書いてあるのかな。
 でも,悉皆調査ということは国の予算を使っているわけだから,情報公開請求ができるのでしょうか?

Re: 日教組の県別組織率って

ですね。どなたか教育委員会月報をお持ちのかた,あるいは国に情報公開請求したかたはおられないでしょうか。うまくいけば日教組の組織率が高いほど成績が良いという結果が出せるかもしれません。もう中山大臣はやめたのでどうでもいいかもしれませんが。

http://opac.ndl.go.jp/Process

http://opac.ndl.go.jp/Process?MODE_10100005=ON&SEARCH_WINDOW_INFO=06&THN=26&INDEX_POSITION=0&DB_HEAD=01&SORT_ORDER=01&SHRS=RUSR&QUERY_FILE=3977425240_8280562&TA_LIBRARY_DRP=99&DS=0&CID=9333924&SS=01&SSI=0&SHN=26&SIP=1&LS=3977425240

↑国立国会図書館の蔵書にあるそうですが。

少なくとも私の近所の図書館にはなさそう;w;

教育委員会月報

三重大学の教育学部にも所蔵されてますよ。
http://webcatplus-equal.nii.ac.jp/libportal/HolderList?txt_docid=NCID%3AAN00345826

第一法規からバックナンバーを取得するとか。
http://www.daiichihoki.co.jp/dh/product/500116.html

Re: 教育委員会月報

さすが!私も実はOPACで見つけたのですが,教育学部のどこにあるか聞いて回る気力がなく,そのままにしてしまいました。第一法規からバックナンバーを注文するという手もありますね。そこまでする気力がありませんでした。目の前にデータがあれば,現実逃避したいときについ解析してしまうのですが。

「組織率じゃないんです」

落伍弟子さん:「組織率じゃないんです」だったら,何が指標?,え,せっかく組織率との関係を調べていたのに!番組では みのもんた のおかげで「組織率じゃないんです」の次が聞けなかったようだ。

組織率じゃない理由の一端は「自己申告」だからかも

都道府県教育委員会が、市町村立小中学校・都道府県立高校の教職員の一人一人についてどの職員団体に所属しているかチェックできるはずもなく、加入数は職員団体の「自己申告制」です。(確か人事委員会または公平委員会への申告です)
なんかの県民大会の参加者数で主催者発表数と警察発表数とで一桁の違いが出てくるように、実態と異なることもあるでしょう。
その意味では基礎データが当てにならないものを比べても有意とは言えないなあ、というのが私の感想です。
むしろ「朝日が涙目で反論している記事」という印象すらあります。

職員団体がイデオロギーを教育の場に持ち込んでいることは事実です。
(職員団体のページで見る限り、イデオロギー教育しまくりとしか思えません。)
たとえば、国旗を掲揚するかどうかの議論を夜中まで職員会議で繰り返すよりも、児童・生徒のためにすべきことがいくらでもあります。

その意味で朝日新聞なりのマスコミが政治家の言葉尻をとらえて批判するのは情けないなあと思うのです。
マスコミ自体がイデオロギーで記事を書いているということが、あまりにもあからさまですから。

組織力ではない要因は…

産経のインタビュー
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081001-00000522-san-pol
魚拓は
http://s04.megalodon.jp/2008-1001-1302-03/headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081001-00000522-san-pol

によると、「組織率は関係ない。固まり、声の大きい本当の過激運動家の影響力が大きいんですよ。」(中略)「ちゃんと(成績データは)公開されていますよ。具体的な県名を言うことは控えますが。そういうところは組織率は低いけれど、ちゃんと教えないんだから。」と言うことらしいです。
 本当かどうかを確認したいと思う人は多いわけですから、何らかの調査でそのような結果が出ているとしたら、情報公開請求できるように、書誌情報を公開すべきだと思います。
 ついでに書くと「活動家のいる所の成績が悪い」と言うことが本当に調査結果として出てきているとすると、「活動家」と見なされる人の教えているところの成績をピンポイントで調べたことになります。このような、担当者毎の成績調査をすることは、前の学力テストでも横行し、今回も足立区等で報告されている、“成績の悪い児童を欠席させる”“巡回しながら回答を教える”ことにつながるのは、火を見るより明らかだと思いますが、本当にこのような調査をしたのかは、文部科学省の良識が問われるところでもあるでしょう。
 もっとも、「こういう日教組に支配された民主党の輿石さんの選挙区の山梨なんてひどいんだよね。」と書かれている山梨の順位が低いわけでもないことからも、元大臣側が「涙目で反論」しているだけのように見えますが。

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