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台湾観光:中国大陸市民に解禁3カ月…伸び悩み 馬総統への失望拡大も

 中国大陸の市民の台湾観光が解禁され3カ月が経過した。だが、台湾の馬英九政権が目標とした「1日当たり3000人」を大幅に下回り、解禁後初の大型連休となった中国の国慶節(建国記念日)の休暇(9月29日~10月5日)中も伸び悩む。中台間の経済交流の活性化を軸に、景気浮揚を公約に掲げた馬総統に対し失望感が広がっている。【台北・庄司哲也】

 「遊覧船業者は新造船を購入し、中国大陸にシェフを派遣して中国人観光客の味の好みを研究したレストランもあるのに」

 台湾有数の観光名所「日月〓(にちげつたん)」湖畔にある南投県水社村。黄寧図村長はあてが外れ、落胆の表情を隠さない。観光施設ににぎわいはない。

 ◇目標3000人の1割

 中国大陸からの台湾観光は7月4日、解禁された。滞在は1回10日間以内と制約があるが、台湾旅行業界は特需に大きな期待を寄せた。だが、解禁から9月18日までの統計では1日平均226人。当初目標の3000人の10分の1に満たない。

 馬政権が期待をかけたのは国慶節の大型連休。連休初日の9月29日は1日としては過去最高となる1896人の中国大陸観光客が台湾入りしたものの、30日には679人、10月1日には311人と減っていった。

 陳水扁前政権が対中政策で慎重姿勢を続けたのとは対照的に、「対中融和」を打ち出す馬英九政権は週4便の中台直行チャーター便の開設、人民元と台湾ドルの交換業務の開始に踏み切った。

 ◇結局日本人頼み

 台北市中心部にあるみやげ店「澎湃ショッピングモール」は8月、中国大陸からの観光客を見込んだ複数の旅行会社が出資し、オープンした。約5300平方メートルの広い売り場には中国大陸で使う簡体字の案内が目立つ。お茶や貴金属、食品などが並ぶが、陳永湖マネジャーは「日本人客が半数、中国からは3割程度」と話す。

 航空便の燃料代「燃油特別付加運賃」(燃油サーチャージ)の加算もあり、台湾を訪れる日本人観光客は8月現在で前年比5・7%の減少。しかし、1日平均3000人を超え、国・地域別の観光客数では断然トップ。台湾観光業界の「日本人頼み」に変わりはない。

 ◇物価高など背景

 観光行政を主管する台湾交通部(国土交通省に相当)の毛治国部長(閣僚)は「まだ試運転の期間」との認識を示し、中台直行チャーター便の増便など改善すべき点を挙げた。一方、台湾の中央通信は2日、北京で中台交流に携わる関係者の話として「台湾の物価が高過ぎる。渡航までの手続きに時間がかかるのも要因」と伝えた。

 また、渡航前に最低でも20万台湾ドル(約65万円)の保証金を旅行業者に預託しなければならないことも、台湾観光が敬遠される背景とみられている。

 世界経済の先行きが不透明感を増す中、台湾経済も株価が大幅に下落。馬総統は総統選で掲げた「経済成長年6%以上、1人当たりの所得3万ドル、失業率3%以下」の公約を事実上撤回している。

 中国大陸からの観光客の低迷は、野党・民進党に政権攻撃の材料を与えており、同党は「『解禁4年目は1日1万人』の公約は、笑い話だ」と批判する。

毎日新聞 2008年10月4日 東京朝刊

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