男女共同参画基本計画をこの人に聞く
目指すのは男女共同“家族・社会”です(7)
内閣府政務官 山谷えり子
聞き手/大学講師 猪野すみれ
「日本の子供たち」という感覚
−−先日、少子化・男女共同参画担当の猪口邦子大臣がテレビ出演して少子化対策を説明していた際、司会者から「産めよ増やせよ、ですか」と批判するような質問を受けていました。これだけ少子化が進んでもマスコミはこのような感覚でしかないのかと驚きましたが。
山谷 赤ちゃん誕生を皆が喜ぶのは美しいことですのにね。それがけしからんという人は、「国はまた戦争をするために、兵士となる子供を産ませるつもりか」とでも考えているのでしょうか。「国家」自体を悪だと思っているんでしょうか。
「産めよ増えよ、地に満てよ。これが神のお望みである」。素晴らしいことだと思います。素直に「産みたい、子らが元気で増えるのが嬉しい」と思える日本社会であって欲しいと思います。私自身は、子供を産み育てるのは、自分を育ててくれた親や先生、またお世話になった方々、先人への恩返しという感覚がありますが、少なくとも家族の絆や子供を産み育てることのすばらしさが見直されなければ、少子化の根本的な解決にはならないでしょう。
そのためにも、今、日本社会の土台の中に入り込んでしまっている家族否定、文化否定、秩序破壊思想と戦わなければならないのです。今回の第二次男女共同参画基本計画がその手始めとなればいいのですが、試練はこれからです。
−−私も単刀直入に「産めよ増やせよ」でよいと思います(笑い)。具体的に国民には、どうアピールされるのでしょうか。
山谷 わが子の育成に責任をもちつつ、わが子さえ良ければいいというのではない感覚、つまり「日本の子供たち」という感覚が広がればいいと思います。「どの子もわが子」と思うならば、教育の現状にも激しい怒りや関心を持てると思いますし、不適切なジェンダーフリー教育が行われていないかどうか大勢の目でチェックできると思います。みんなが子供たちを愛しむという社会が望ましいですね。
今は共同体で子供たちを育てるという感覚が失われてしまっています。私はこれが少子化の大きな原因の一つだと思っているのですが、なかなか適当な対策がみつかりません。「保育所を増やす」「出産費用もサポートします」という政策はわかりやすいのですが、それでは根本的な部分が解決しません。やはり、根底を支えるのは「親子、共同体の絆」、それから子供たちを「日本の子供たち」として寿ぐ大人たちの価値観、気持ちだと思っています。ですから、土台となる政策を政務官会議のプロジェクトチームで議論し直さなければならないと思っています。
私自身は身近なところからでも始められるのではないかと考えています。例えば、全国約四千七百カ所の児童館に中高年の皆さんに来ていただき読み聞かせをしていただく。母親同士も育ち合う。あるいは放課後小学校の校舎と校庭を開放して異世代の交流の場を設けるという取り組みです。地域の人たちが子供たちを見てくれるのであれば、子供たちが塾に行かなくてもすみます。いまは、行く場所もないし家に帰っても両親共働きで誰もいないから塾に行くという子供も増えています。
とにかくまず共同体の中に子供の居場所をつくることです。参加してくださる方には、お金を出せればいいと思います。児童館や放課後学校の校庭で子供を遊ばせることで五百−六百円の時給をもらえるのであれば、パートをするよりこちらがいいと選んでくださるかもしれません。行政も学童保育よりずっと安くすみます。おばあちゃんやおじいちゃんにもお願いしたい。防犯目的の公立スクールバスの導入も地域によっては必要かもしれないのですが、道端に椅子を置いて、おじいちゃん、おばあちゃんに、「午後三時から五時までここでおしゃべりしながら、子供たちが下校してきたら『お帰り』、と声をかけ、おしゃべりしてあげて」と頼んでもよいのではないでしょうか。共同体に息吹を吹き込む方法、互助サービスのあり方を、みんなでこれからも考えていきたいです。
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「正論」平成18年3月号 |
論文
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