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【光市母子殺害判決の要旨(2)】「初対面で真実を話すのは不自然」 (3/4ページ)
しかし、被告人は、判決書が朗読されるのを聞いているほか、判決書や検察官作成の控訴趣意書などを読んで、犯行態様や動機について全く違うことが書かれているのは分かった旨供述していることに照らすと、弁護人に対し、判決で認定された事実が真実とは異なるなどと話したりすることもなく、無期懲役という極めて重い刑罰を甘受するということは考え難い。特に、差し戻し前控訴審の国選弁護人2名は上告審において私選弁護人に選任されているところ、これは、被告人が両弁護士を信頼したからこそ弁護人として選任したものと解される。
そして、差し戻し前控訴審の国選弁護人が選任されてから上告審で公判期日が指定された平成17年12月6日までの問、弁護人は被告人と296回もの接見をしている。しかも、被告人は父親との文通が途絶え、弁護人が衣服、現金などの差し入れをしてくれるなど親代わりになったような感覚であった旨供述しており、多数回の接見を重ねた弁護人に対し、強姦するつもりはなかったという点を除いて、新供述で述べるような話をしなかったというのは、まことに不自然である。
また被告人は、同弁護人に対し、一貫して強姦するつもりがなかったことを伝えたというのであるが、そのような説明を受けた弁護人が、死刑の可否が争われている重大事件において、強姦の犯意を争わないということは通常考えにくい。同弁護人作成の答弁書および弁論要旨をみても、強姦の計画性を争うのみであり、むしろ、強姦の犯意を生じたのは犯行現場においてであるという趣旨の主張が記載されているところ、そのような記載がされた理由について、被告人は分からないと述べるにとどまっている。
なお、被告人は弁護人に対し、強姦するつもりはなかったと言ってはいないとも供述している。このように供述が変遷すること自体不自然である。
被告人が公訴提起後6年半以上もの間、弁護人に対し、新供述で述べるような話をしたことがなかったのに、初めて接見した安田弁護士らから、事件のことを話すように言われて、新供述を始めたというのも不自然であるところ、被告人は納得できる説明をしていない。
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