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【略歴】
山谷えり子氏 昭和二十五年(一九五〇年)、東京生まれ。聖心女子大学文学部卒業。出版社勤務、サンケイリビング新聞編集長などを経て、平成十二年衆議院議員。十六年参議院議員初当選。自民党厚生労働部会部会長代理。『嫁姑合戦』『人生について、父から学んだ大切なこと』『サッチャー改革に学ぶ−教育正常化への道』(共著)など著書多数。

猪野すみれ氏 昭和四十六年(一九七一年)福井県生まれ。東京都在住。早稲田大学大学院博士課程修了。法律学、教育学、文学の学士号と教育学の修士号を持つ。複数の大学で授業を受け持つ。

 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>




男女共同参画基本計画をこの人に聞く
目指すのは男女共同“家族・社会”です(2)


内閣府政務官 山谷えり子
聞き手/大学講師 猪野すみれ

「三千五百件」がすべてを語っている

 −−「男女同室着替え」「男女同室宿泊」「男女混合騎馬戦」など、ジェンダーフリー教育の間違った解釈から導き出される具体的な事例が基本計画の中に入っていることに驚きました。このようなことが行われていたこと自体にも驚いていますが。

 山谷 いえいえ、まだまだありますよ。これらはほんの一例にすぎません。自民党のPTは、この二十二行の決定に基づき、今後も教育現場や行政の現場でおかしなことがあるかどうか引き続きチェックをし、国民の声を聞き続けるつもりです。それでも暴走が止まらないのであれば、「ジェンダー」という言葉をはずす、ということになりました。

 そもそも、二十二行も書かなければ定義できない言葉というものは行政用語としては未熟だと思います。誰でもわかる日本語を使うことができれば一番良いのですが、適切な日本語が見つからないということで、このような長い定義となり、そして間違った解釈に基づく取り組み例として「男女同室着替え」「男女同室宿泊」「男女混合騎馬戦」などを挙げたというわけです。

 −−定義では他にも「『ジェンダー・フリー』という用語を使用して、性差を否定したり、男らしさ、女らしさや男女の区別をなくして人間の中性化を目指すこと」「家族やひな祭り等の伝統文化を否定すること」「公共の施設における男女別色表示を同色にすること」を男女共同参画とは無関係な事例として挙げています。「人間の中性化」などという非現実的な文言までこうした公文書に入れないといけない状況はやはり異常ですね。

 山谷 「ジェンダー」という用語は本来、価値観を含むものでもなく、文化を否定するものでもないはずなのですが、奇妙な解釈をする傾向が強くなっているのが現状です。「男女混合騎馬戦」どころか、男女で体を密着させ、果ては抱っこしたりおんぶしたりする「体ほぐし運動」というのも行われています。

 −−東京都が、「ジェンダーフリー」の考え方に基づいている場合は学校現場で使用しないよう求めた「男女混合名簿」は「不適切事例」としては挙げられていませんね。

 山谷 それぞれの事例を入れるかどうかは、内閣府、そして関係省庁と相当な時間をかけて検討しました。ある事例に関しては約二時間激論しても結論が出ず、いったん解散してそれぞれ検討して再び議論するということもありました。一日に四回、会合を開いたこともあります。それだけ一つ一つの言葉にまつわる考え方が多岐にわたるという証拠だと思います。 「男女混合名簿」については、それを出発点にして「男女混合騎馬戦」「男女一緒の身体検査」「男女同室・同テント宿泊」などが行われているのだから、不適切な事例として載せるべきだという意見が自民党のPTから出されました。それを受けて内閣府でも検討をしましたが、最終的には教育現場の問題だとして文部科学省の意向に従うことになりました。文科省は「男女混合名簿」を今回は不適切事例としては載せる必要がないという意向でした。しかし、「男女混合名簿」がそもそもの出発点になっているという現象がこれからも見えてくるのであれば、やはり不適切であるという声が高まってくると思います。

 今回の見直しにあたっては、全国の方々から寄せていただいた三千五百件の実例がたいへん参考になりました。県別実例集も作り、国会議員に配りましたが、たとえば児童に近所の家の夫婦生活をたずねさせたり、過激な性描写が問題になっている子供向けのコミックをわざわざ児童に買ってこさせて授業で取り上げたりといった想像もつかなかった非常識な実例が寄せられています。国民の皆さんの問題意識も高まってきたわけですから、「男女混合名簿」がそもそも問題であるとの認識がなされるのであれば、次の議論として取り上げられるだろうと思います。

 −−一方で「男女同室着替え」は場所がないために行われていることであり、ジェンダーフリー教育とは関係がない、という声が上がっています。つまり、ジェンダーフリーに反対する勢力がデッチあげている、というのですが。

 山谷 例えば日教組は、「男女同室着替え」は場所がないからだと言って施設整備費の増加を求めています。これは争点をずらしているだけだと思います。そもそも、ジェンダーフリー教育は「男女の区別が差別の始まりであるので、区別してはならない」というフェミニズム理論やジェンダー学に由来しています。PTには小・中学校での「男女混合騎馬戦」の実例が寄せられ、男女で抱っこしたりおんぶしたりする「体ほぐし運動」も実際に教科書に載っているわけですから、デッチあげでも何でもありません。この運動が実際になされている写真を小泉純一郎首相も安倍晋三官房長官も御覧になって、「ひどい」と憤っていらっしゃいました。どうして男女で抱っこしたり、おんぶしたりして体をほぐさなければならないのでしょう。

 このような非常識な事実を隠すために、「『男女の同室着替え』は部屋が足りないからだ、施設整備費を増やせ」と論点をずらしているのです。「男女混合騎馬戦」「体ほぐし運動」「男女を同じテントで寝かせる」−−これらは教育予算とは全く関係ないことです。日教組などは「お金がないから」「行政側が悪い」などと理屈をつけられる「男女同室着替え」だけを取り上げて、本質的議論を避けているのです。 「ジェンダーフリー教育」「過激な性教育」の見直しに反対する人たちは、セックス人形を使って小学校の低学年からセックスのやり方を具体的に教えているのは養護学校だけだとも言っています。「具体的に理解できない子供たちのためにわかりやすく説明しているだけだ」というのですね。しかし、PTに寄せられた実例を見れば、全国のいたるところでセックス人形が使用されていることがわかります。中には一体九万円もするものもあるセックス人形が、東京都だけでも何十体と押収されています。「養護学校だけで使われている」とは言い逃れでしかありません。

 実態を知らないと、そうした言い分に納得してしまいがちですが、PTに寄せられた事例をみれば一目瞭然です。「男女同室着替え」は教室が足りないというのは明らかな嘘です。少子化で子供が少なくなっている分、教室は余っています。

→つづく

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 「正論」平成18年3月号 論文



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