男女共同参画基本計画をこの人に聞く
目指すのは男女共同“家族・社会”です(1)
内閣府政務官 山谷えり子
聞き手/大学講師 猪野すみれ
昨年、男女共同参画基本計画が五年ぶりに見直され、五月の中間整理発表を経て、同年十二月に閣議決定された。「ジェンダー」という用語を盛り込むべきかどうかといった問題などで国民の関心を集めた同計画について、自民党「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」(以下PT)事務局長として男女共同参画のあり方について積極的に発言し、十一月二日に内閣府政務官に就任後は政府の立場で計画決定に取り組んだ山谷えり子参議院議員に話を聞いた。
暴走を止めるための二十二行の定義
−−第二次男女共同参画基本計画では、最大の焦点であった「ジェンダー」(社会的文化的性差。新計画では社会的性差)については二十二行もの文章を費やして定義しています。ここに至った経緯やその意義について、教えていただきたいと思います。
山谷 男女共同参画基本計画の目標が、「男女が仲良く、それぞれの持ち味を発揮して活力ある社会をつくる」ことであるという点については、コンセンサスがあったと思います。ただ、五年前に閣議決定された男女共同参画基本計画では、なんの定義もなされないまま「ジェンダーに敏感な視点」という言葉が入っていて、計画自体が非常に分厚い計画書であったため注目されず、言葉の意味が熟考されないまま閣議決定されました。
その後、教育や行政の現場で、家族を否定するような取り組みや、子供の発達段階を無視したような過激な性教育が急激に広まりました。「自ら考え判断する意志決定の能力を身につける」という言葉に基づいてフリーセックスや人工中絶を奨励するような例も見られました。更に驚いたことに、ひな祭りなどの日本古来の行事をよくないと見なすような文化否定運動もありました。
これらが「ジェンダーに敏感な視点」に基づくものであるとするならば、「『ジェンダー』とは一体何なのか」という問題意識が自民党の中で生まれて、PTが教育現場の実態調査に乗り出しました。今回は第二次男女共同参画基本計画になりますが、前回と同じ過ちを繰り返してはいけないということで、内閣府としても中間報告をして公聴会も開き、パブリックコメントを募集しました。
国民の皆さんや自民党内閣部会の中では、この問題に関する関心が高まり、PTには全国から三千五百件にも及ぶ「ジェンダーフリー教育」に関する実例が寄せられました。ここへ来て初めて、「ジェンダー」という言葉のもたらすいろいろな問題点が具体的に浮かび上がってきたというわけです。
−−何故「ジェンダー」という言葉が残ったのでしょうか。
山谷 PTでは、その調査に基づいて、「『ジェンダー』は計画から外すべきだ」ということになりました。つまり、「ジェンダー」という言葉自体が混乱の原因、恣意的解釈・運用の源になっていると考えたのです。自民党内閣部会でも同じような意見があり、基本計画策定の際に、「ジェンダー」という言葉を入れるか、はずすかで激論となりました。
最終的には、既に地方の男女共同参画関連条例や計画の中に、「ジェンダー」という言葉が入ってしまっている以上、きちんと定義して暴走や恣意的な運用解釈を止めるほうが良いのではないかと判断して、二十二行にもわたる定義となりました。
→つづく
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「正論」平成18年3月号 |
論文
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