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2008年10月5日

◎振り込め詐欺増加 何よりも検挙率を高めたい

 手口が巧妙になったことなどから検挙率が低迷し、なお増加傾向にあるのが「振り込め 詐欺」である。

 今月は撲滅月間であり、警察庁は年金支給日の十五日を全国統一の「ATM(現金自動 預払機)集中警戒日」として過去に被害が発生したATMでの警察官配置を強化したり、詐欺グループのメンバーがATMから金を引き出す様子をキャッチした防犯カメラの映像をインターネットのホームページで公開したりする。

 振り込め詐欺に限らず、犯罪に対しては検挙にまさる抑止力はないのだが、振り込め詐 欺の検挙率は非常に低い。今年上半期のそれは10・6%にとどまっている。

 巧妙な犯人を追うことはザルで水をくむような苦労もあるのだろう。が、そうした苦労 を粘り強く続けることが結局、検挙率の引き上げにつながるのだ。

 石川県警は金融機関との連携強化に加えて交番や駐在所の署員が巡回を通して地域社会 や家庭との連携をはかるとともに、JR金沢駅などで振り込め詐欺防止キャンペーンを展開し、被害防止を呼び掛けたりしている。

 富山県警は新手の振り込め詐欺である「還付詐欺」について、犯人と被害者の会話をイ ンターネットのホームページで公開し、相手からATMの話が出てきたら最寄りの警察へ知らせるように呼び掛けている。金融機関との連携も強めている。

 今年一―八月の全国の被害額は前年同期比41・9%増の約二百十四億円で、うち九割 がATMや金融機関の窓口から振り込まれており、グループ本体とは別にサングラスやマフラーで顔を隠した「引き出し役」がいることなどが分かった。

 八月末現在の石川、富山両県の被害は、石川県が前年同期比六十五件増の百十三件、被 害額は三倍に迫る約一億一千四百万円となり、過去最悪のペースになっていることを知ってほしい。

 富山県は同五件増の百十二件で、被害額は千三百万円減だが、それでも約一億二千七百 円となっている。地味な努力を続けることで詐欺グループを追い詰めていきたい。

◎米国発の金融危機 起きてからの批判は簡単

 米国発の金融危機対策として最大七千億ドル(約七十五兆円)の公的資金で不良資産を 買い取る緊急経済安定化法案の修正案が米下院で可決された。いったん否決した下院だが、上院が修正案を可決したことを受けて結局、可決に踏み切ったのだ。

 率直に言えば、ウォール街のけた外れのお金持ちに対する嫉妬(しっと)まじりの否決 が一転、可決に変わったのは金融危機の傷口を広げるわけにはいかないと思い直したからだろう。一九二九年、株の暴落がウォール街を襲った、いわゆる「暗黒の木曜日」から始まった大恐慌と、それに続く長い不況という大きな出来事から学んだ知恵が生きていたのだと思いたい。

 大恐慌のとき、フーバー大統領が不況救済は地方政府の役割であるとして連邦政府によ る救済を行わず、むしろ均衡予算を成立させ、不況を深刻化させたのである。この大統領に代わって一九三三年にルーズベルト大統領が登場した。この人も財政均衡論者だった。が、経済学者らの提言を入れて、連邦政府が需要をつくり出すケインズ主義のニューディール政策を展開した。経済政策としては評価が分かれるのだが、心理的に世の中を明るくした。

 あの大恐慌と、目下の金融危機とは大きな違いがあり、大恐慌の原因をめぐって今も諸 説があるのに比べ、金融危機の原因は直接的にはサブプライムローンの破たんだったのである。

 金融危機が発生してから、さまざまな批判が起きてきた。後から批判するのは簡単だ。 住宅価格の右肩上がりの継続を前提としたサブプライムローンのひどい欠陥が明らかになったのだから、せめて、そうしたローンが放置されてきたこと、ローンにひそむリスクを分散して証券化し、被害を広げることなどへの切り込んだ議論がほしい。

 バブルを発生させやすいのが市場主義である。が、市場に代わるよい制度が見当たらな い限り、慎重に使っていくしかあるまい。後から批判するだけでなく、こうした点についても掘り下げた議論を期待したい。


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