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2008年10月5日

 明治末期、児島虎次郎という画家がいた。倉敷の大原美術館創立者である大原孫三郎に認められてフランスに留学、大原家のばく大な資金で西欧絵画を収集した人である

その絵画の師であり、収集アドバイザーにもなったのがアマン・ジャン(1936年没)という後期印象派時代の画家だった。大原美術館の歴史は、そのまま日本の西洋美術接近の歴史にもなり、重要な話として伝わっている

が、ジャンの元に通ったもうひとりの日本人がいたことはあまり知られていない。武官として欧州滞在中の前田家16代当主の利為(としなり)(1885―1942)である。前田育徳会には利為が直接買い入れたジャンの作品が4点あるという

東京の松方コレクションもジャンの作品を所蔵する。それぞれの収集時期が異なり、目利きも別人だが、残された作品からは、今につながる日本人の西欧絵画に対する好みやあこがれがうかがえて面白い

金沢で大原美術館展が始まった。北陸ゆかりの棟方志功や現代の若手画家の作品収集でも知られる美術館だ。金沢と倉敷。ふたつの、歴史ある都市文化の粋を味わうのも楽しい。


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