2008年10月5日(日) |
十和田市立中央病院の院内助産院が十一月、スタートする。助産師が主に妊婦健診やお産の介助を行うシステムだ。 県内では八戸市民病院に次いで二例目の開設だが、全国的には十年以上前から取り組まれ、院内助産で誕生した命が千人を超えた先進施設もある。産科医の負担軽減と安全なお産が両立する仕組みを、十和田でも定着させたい。 十和田市立中央病院は、東北大学が産科医を引き揚げた二〇〇五年四月から産科を休止していた。市内には分娩(ぶんべん)を扱う産科医が一人だけで、多くの妊婦は八戸市や五戸町などに通院、出産している。 十和田市はこのほど、ようやく常勤産科医一人を確保、九月から産婦人科診療を再開した。お産については、助産師が正常分娩を扱う院内助産に特化して対応することになった。 実際に分娩を取り扱うのは、院内助産院が開設される十一月四日以降となる。産科常勤医は、助産師の指導的立場となり、緊急時の対応などに当たる。 院内助産院開設を発表した際、蘆野吉和院長は「医師の負担軽減へ、できるだけ助産師に分娩を任せる体制をつくりたい」と、その理由を説明した。 産科医が足りないため、分娩施設が減少する。その影響で、残っている施設の勤務環境が急速に悪化している−。産婦人科医療現場の実感であり、共通認識のようだ。 日本産科婦人科学会は七月、産婦人科動向意識調査の集計結果を報告した。「今の産婦人科の状況について、一年前と比較して、どのように感じていますか」と質問。産婦人科全体について「悪くなっている」21%「少し悪くなっている」26%と回答。47%が悪化を指摘した。 その理由として「産婦人科医不足が改善していない」「分娩施設の減少に歯止めがかかっていない」「周囲の施設減少のため、残っている施設の負担が増加し、勤務条件が悪化している」などの回答が多数を占めていた。 医師不足の現状を少しでも緩和し、医師の負担を軽減するために、助産師との連携を強化できないか。 病院内で助産師が出産前後のケアや正常分娩を担当する。容体が急変したら、医師にバトンタッチする。理想的なお産システムとして最近、注目を集めている院内助産だが、十一年前から取り組んできた病院がある。 神戸市にある佐野病院。創立百二十年を迎えた伝統ある総合病院だ。ただ、同病院が院内助産システムを取り入れたきっかけは、決して「産科医不足」ではなかったという。 佐野病院のホームページにこうある。「1997年(平成9年)から『病院の中で助産所のようなアットホームなお産を』をキャッチフレーズに始めました」。「お母様方のサポート役」「出産、子育てママの実家」という言葉も並ぶ。 十和田市立中央病院も、家庭分娩や助産院でのお産のように家庭的な自然分娩を目指し、助産師が妊婦健診、保健指導などを行うという。助産院の快適さと病院の安全性を兼ね備えたシステム確立に期待する。 |