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【コラム】盧武鉉流「相手の立場で考える」(上)

 権力から退いた前大統領の発言を重視する必要はない。処世術に関する話ならば耳を傾けるのが礼儀だが、現実政治に関する話ならば愚痴にすぎないからだ。退任した盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領が1日に行った講演で放った言葉は、そうした意味で愚痴以上でも以下でもない。

 盧武鉉前大統領の講演は大部分が在任中の自身の対北朝鮮政策に関する自慢で、北朝鮮の立場を擁護または理解するという内容で一貫していた。そして、その「よくやった」という対北朝鮮政策を引き継がない李明博(イ・ミョンバク)政権に対する非難と揶揄(やゆ)がそれに続いた。言わば「盧武鉉の言いたい放題」だった。ゆえに盧武鉉前大統領の発言にはいちいち反論する必要を感じない。むしろ彼がもはやこの国の大統領ではないという事実にただただ安堵(あんど)するばかりだ。

 しかし、到底看過できないことが一つある。「相手の立場になって考える」という彼の発言だ。盧武鉉前大統領は「相手の立場になって考えるとはどういうことか。北朝鮮が核兵器を開発しようとする目的は何なのか。北朝鮮の立場で考えて見よう」と述べた上で、韓米合同軍事演習や韓国の北朝鮮への電力支援について、北朝鮮がどんな不安や恐れを抱いていたかを「立場を変えて考えてみれば、事理をより客観的に理解できる」と主張した。

 人間は社会生活において相手の立場になって考える必要がある。そうすることによって、対立の溝を狭めるのにある程度役立つだろう。一国を治める責任ある大統領もそういう姿勢が必要だ。社会的弱者や不遇な階層の立場で事物を考えるのは、大統領としてなすべきことの一つだ。

 しかし、国家安全保障と外交の問題においては誰もが相手の立場になって考えることはできない。大統領であればなおさらだ。韓国が外交・安全保障問題で相手の立場を考えるということは、韓国に危害を加えたり、外交的損失を負わせかねない事案を相手の立場で考えることを意味する。さらに「ゼロサム関係」が明確な事案を相手の立場で考えることは譲歩と敗北に直結する。

金大中(キム・デジュン)顧問

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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