
退院する新生児を見守る富大附属病院の芳村講師=同病院
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富大附属病院の小児循環器チーム(代表・市田蕗子准教授)は三日までに、体重一四六
〇グラムの新生男児に対し、人工心肺装置を使った心臓の先天性疾患治療の手術に成功し
た。同病院によると、北陸の医療機関で手術した症例の中では最も低体重での成功となる
。術後の経過も良好で、男児は同日、退院した。
執刀した富大第一外科の芳村直樹講師によると、男児は七月、北陸の医療機関で、予定
日より七週早く一四二〇グラムで誕生した。出産直後からチアノーゼ(低酸素血症)が認
められ、先天性の総肺静脈還流異常症と診断された。
男児は小児心臓病治療で実績がある富大附属病院に転院し、体重の増加を待って手術す
る予定だったが、心不全や呼吸不全が進行したため、生後二十日目の八月十一日、手術に
踏み切った。
男児の心臓は直径約四―五センチで、肺静脈の直径は約四―五ミリ。心臓を切開して人
工心肺装置につなぎ、心停止時間百七分の間に正常に血液が流れるよう通り道をつくった
。手術はほぼ予定通りの五時間二分で終了、術後七日で人工呼吸器が外れ、十一日目に集
中治療室を出た。
現在、男児の体重は二五五四グラムに増え、血管が狭くなるなどの合併症もない。母親
は退院を前に「九月十九日に母乳を飲んでくれた時、生きる力が伝わった。感謝を忘れず
、元気に育ってほしい」と話した。
医療チームは第一外科、小児科、麻酔科の医師、看護師、臨床工学技士十六人で構成さ
れ、芳村講師は「人工心肺装置を稼働させる技術、診断、治療にかかわるスタッフが一丸
となったからこそ、手術は成功した」と語った。
●総肺静脈還流異常症 肺静脈が、血液が本来戻ってくるべき左心房でなく、上大静脈や
下大静脈、右心房などに流れ込んでいる先天性心疾患。全身に十分な血液が流れず、ショ
ック状態に陥る。2006年は全国で160人が手術を受けている。