パンの消費期限が3日間だったとする。ある店ではその3日目当日にはもう売り場から除かれてしまうという。
国立環境研究所の調査によれば2004年度に捨てられた食品は1939万トン。このうち製造過程などで出る産業廃棄物は339万トン、売れ残りなどを含む一般廃棄物が1600万トンある。ラベルのプリントミスがあるジュース、ラベルがちょっと汚れてしまった缶詰、消費期限が近くなってきたお弁当、見た目が不ぞろいな野菜や果物などが廃棄されている。
品質に問題のないこれらの食料を、必要としている人たちに分配している団体がセカンドハーベストジャパン(代表・マクジルトン・チャールズ氏)だ。食べるものがないといえばホームレス?と思いがちだが、日本の中でいま切実に食べものに困っている層というのは難民、母子家庭、高齢者の人たちだという。こうした人たちに宅配や炊き出しなどで食料を分けている。提供するのは食品メーカーや小売店,レストランなどから寄付された食料だ。毎週、炊き出しで500人以上に、食料の小包は150人以上に、そのほか10カ所以上の孤児院やシェルター施設といった場所に食べものが提供されている。2006年度セカンドハーベストジャパンが配給した食料は255トン、現金に換算すると1億5300万円相当にもなった。
この活動に参加することは企業にとってもメリットがある。まず、何千万とかかる廃棄や返品にかかるコストの削減になる。また、社会に貢献していると大きな声でいうことができる。廃棄時の罪悪感を従業員が持たなくて済むし、逆にいいことをしているという気持ちが持てる。さらに無償のマーケティング効果もねらえる。一度そのメーカーの商品をもらうことで会社のイメージアップにもつながるのだ。2006年度の協力企業は約30社。年間約200トン以上もの食品提供をはじめ資金や車などが提供されている。
「ちょっとこれをみてください」と代表理事のチャールズさんがダンボール箱を持ってきた。中には冷凍食品が入っている。
「これもゴミとされたものです。何が悪いかわかりますか?」
消費期限は1年後。わからないという顔をすると「この角」とチャールズさんが指差した。見るとダンボールの箱の一箇所に荷崩れでできたような小さな穴がある。
「中身の食品にはなんにも問題ない。入れ物の箱が少し壊れただけでも小売店はダメというんですね。アメリカにはセカンドハーベストのようなフードバンクが210箇所もあります。B級品の市場もある。それでも食品の28%はゴミとして捨てられています。日本には受け入れ先は何もない。ただ捨てられているだけです」
食の安全性、何かあっては困るといった恐れが潔癖なまでに小売店やメーカーを過敏にしている。これほどまでに食に厳しい国は日本以外に例をみない。食にまつわる事件が多い中、メーカーが神経をとがらせる気持ちもわからないではないが、あまりにも安易な食品廃棄ではないだろうか。
いまセカンドハーベストジャパンに協力している企業はメルセデス・ベンツ、ハーゲンダッツ、スーパーのコストコなど圧倒的に外資系が多い。わたしたちの国の問題なのだから日本の企業にぜひとも参加してほしいものだ。
チャールズさんたちのビジョンはフードバンクが全国的に広がること。
「別にセカンドハーベストじゃなくてもいいんです。地元のメーカーが地元のフードバンクに食料を提供する。こうすればもっとスピーディでコストもかからない、いいことずくめですよね」。
いま、寄付された食品を保管しておくスペースを募集中。個人の協力も大歓迎。詳しくはセカンドハーベストジャパンまで。http://www.2hj.org/index.php/jpn_home(取材・文 環境ライター 鞍作トリ)
2008年10月3日