goo
濱本康敬の独り言
広島市に勤務する者の独り言です。独り言は、あくまで独り言です。(コメントは事前承認制)
暴力団員に対する市営住宅明渡訴訟と長崎市長射殺
Weblog / 2007年04月18日
広島市が市営住宅に入居している暴力団員に対し明渡し訴訟を提起したことが報道された翌日の07年4月17日、長崎市長が暴力団員によって射殺されました。たった一人の暴力団員によって、営々と築き上げてきた民主主義を基盤とする地方自治の制度が、もろくも葬り去られるという現実を目の当たりにして、暴力団という組織の持つ暴力のすさまじさに、身が震える思いでした。と、同時に広島市の担当者がこうした事件に巻き込まれないよう思わず祈りました。

長崎市長射殺事件の詳細はまだよくわかっていませんが、公共工事の指名に絡む利権問題が原因のようです。一部、ベンツの傷に対する逆恨みが原因という報道もありますが、話としては面白いのですが彼らがそんな割の悪い「商売」をするはずがありません。射殺の背後には、冷静な損得計算があったはずです。暴力団員の暴力は、彼らの最大の「商売道具」なのです。それを安売りするはずがありません。

広島市が今回の立退き訴訟に踏み切ったいきさつについては、過去のブログに書いています。http://blog.goo.ne.jp/yasunorihamamoto/e/3cc6a944a0890931275b32eaa97e5bd4
http://blog.goo.ne.jp/yasunorihamamoto/e/6bee35568fd83706c7a84169cd1857c2
要は、全国に先駆けて先進的な市営住宅からの暴力団員排除の条例を制定したものの、いつものように形だけ整えて実際には放置しておこうとしていたにもかかわらず、中国新聞が「市民からの通報を受けても市が動こうとしない」と報道してしまいました。面子を潰された形となった広島市が区に対応を指示したものの、通常業務を行いながらこのような困難な事務はできないということで、本庁に担当部署をつくりやおら対応に乗り出しました。これを中国新聞がさらに詳細に報道し、引くにひけなくなった広島市はついに法的な措置をしなくてはならなくなった・・ということなのです。

条例に基づき、市営住宅の使用許可を取消し、退去勧告を行い、これに従わない場合は、訴訟を提起し、勝訴すればこれに基づき民事執行を実施し、退去事務を完了する・・。確かに、法的な手続きはあらかじめ定まっており、これを粛々と実行すれば容易に解決ができそうです。しかし、そうはいかないのが現実です。これまでのブログでも書きましたが、広島市は市営住宅の管理において適切な事務をおこなっていたわけではありません。市が積極的に関与したかこの際言及しませんが、少なくない不正入居は黙認し、高額滞納も放置されたままです。市営住宅内なる駐車場の経理が必ずしも明瞭でない住宅も無くはありません。そうした不正・不適切な事務について、彼らが市のこれまでの対応を指摘してくれば、額面どおりの毅然とした態度を貫くことは難しくなります。

しかも、今回の訴訟については、必ずしも勝てるという確証はありません。確かに、市営住宅は市の公の施設で、これに市民の方に入居していただくことは、法的には使用を許可するという「処分」行為なのです。市が処分の根拠となる条例を改正し、これに基づき合法的に使用許可の処分を取消したのですから、入居者はこれに従って退去しなくてはならないということになります。しかし、考えてみれば、市営住宅の入居も実態は民間の賃貸住宅で行われている賃貸借契約と相違するものではありません。民間の賃貸借契約の場合、借家人の権利がより手厚く保護され、例え暴力団員の排除が契約上明記されていても、居住の実態において他の住民や大家に迷惑をかけていなければ、契約を根拠に立退きを訴訟で勝ち取ることは極めて困難なのです。今回の事例において、事実関係の詳細は知りませんが、もし、市営住宅に入居している暴力団員が、家賃(使用料)の滞納や組事務所として使用し他の入居者に不安を与えるなどの実害を与えていな場合、如何に裁判所が行政側に甘い立場をとるとはいいながら、立退請求まで認められるかは微妙なところでしょう。もし、万一、訴訟に負けるようなことがあれば、事態はとんでもなく混沌とした状態になります。こんな実行性のない条例を制定した担当部局の職員は、責任を取らなくてはなりません。

そして何より、暴力の問題です。これまでもブログに書きましたが、彼らは最大の商売道具である暴力を最大限有効に使用しますので、普通に考えれば、市営住宅の入居する権利のために暴力を使うとは思われません。しかし、行政が淡々と事務を進め何のトラブルもなく退去することによって、一般市民の暴力団に対する恐怖心が無くなり自分達の威力がなくなると感じれば、今後の商売のためにためらうことなく、「暴力」を使うでしょう。たかが広島市ごときに簡単に退去させられたとなれば、彼らの面子が保てません。担当者の恐怖は、いかばかりかと思うと胸が痛みます。

私は今回の暴力団退去に関する一連の事務を見ていると、広島市という組織が抱える構造的な問題を感じざるを得ません。通常の市営住宅の管理も満足にできない状態を改善しようともせず、全国の自治体が導入を躊躇していた暴力団排除の条例をいち早く制定して形だけは整え、先進都市をきどります。しかし、その実態は、市民からの通報を受けてもこれを長期間放置し、具体的な対応をするつもりもありません。ところが、地元マスコミに報道されると、面子をつぶされたとばかりに区に対応を迫りますがこれを拒否され、しかたなく本庁に担当を急遽つくりやおら対応に乗り出す。しかし、事務を進めるうちに様々な問題に直面し、混乱を極め、結局は所期の目的を達成できず、失敗のつけを市民に押し付ける・・。私は、広島市においてこうしたパターンがすべての行政分野に共通しているように感じます。

行政の現場で、今ある課題すら対応できない体制であるのに、これを改善しようとする意欲も能力もないのに、どうして、できもしない過大な行政目標をかかげ、計画やビジョンなどで形だけはつくろうとするのでしょうか。そうしてできた計画は、当然のことながら、実行する能力も意欲もないのですから、放置したままとなるのはわかったことです。そのうち、マスコミから指摘され、右往左往しながら不十分な体制のまま何とか実行しようとするけれど、現実をしらない幹部職員達が予想もしていなかった問題に次々と直面し、結局は頓挫してしまうか大失敗をしてしまう。その尻拭いは、当然市民に負担を押し付けることよって行う・・。これが今までの広島市なのです。

専門家を育成しようとせず、試験や実績評価を行わない恣意的人事により、幹部職員達は専門知識も現場も知りません。事業や制度を立ち上げる時、実際に実現可能なのか、どのような問題が生じるのかも予想できません。現場も知らず、現場との連携もとれていない企画立案部門で策定された拙い事業計画や条例は、実現性がなく、実行しようとすればとんでもない問題を引き起こします。現場は混乱し、行政は非効率となり、結局は市民に多大な負担を押し付けます。そして、その間、足踏みと後退を続ける広島市を尻目に、きちんとした(いや、普通の)体制をとっている他都市は、どんどん先に進んでいくのです。

前にも書きましたが、市営住宅からの暴力団員排除という高度な課題に取組む前に、市営住宅の通常の管理業務を徹底すよう賢明な努力をすべきなのです。不正入居や不正改造を見て見ぬふりをすることなく徹底して是正し、高額で悪質な滞納者には毅然とした態度で挑み、市営住宅の日常の管理を委託する住民の自治組織には、明瞭な規約と会計報告を求めるなど、当然のことをきちんとすればいいのです。市営住宅には使用料の減免制度もあり、使用者名義の承継制度(内縁の妻を正規の名義人にするなど)があり、こうした制度を適切に運用すれば、入居者に過大負担をかけることなく是正は十分に可能なのです。市営住宅の維持補修・計画修繕をきちんと行い、入居者の方々の住居環境を向上させるとともに、建物の耐用年数を増し、退去後の空き部屋を早期に入居可能状態にし(修繕費の予算が無いということで、多くの部屋が空き部屋の状態で放置されているのです。民間では考えられないことです)、事業収支の向上も図らなくてはなりません。
そうした通常の管理業務をきちんとしていれば、例えば、暴力団員が使用料の滞納をしていたり、組事務所として住宅以外の使用をしていたりした場合などは、現行の法体制で十分に退去措置が可能なのです。そうした通常の管理業務を適正におこなってもなお、より積極的に暴力団員を排除する必要性があり、広島市側にも対応する余力ができてからはじめて、除例を制定し暴力団員の排除に乗り出せばいいのです。それが現実的な市政の運営かと思います。

このように憂う私は、秋葉市長が言う「自虐的」職員なのでしょう。広島市は素晴らしく、職員も能力があり(私も含めてのことなのでしょうか。ありがたいことです)、秋葉市長によってすべての問題が解決されているのですから、この市営住宅暴力団員排除問題も、何のトラブルも無く解決すると「根拠のない楽観主義」により何も考えずにいればいいのかもしれません。しかし、自分の身はともかくも、家族の安全を心配して苦渋に満ちた顔をする担当者を知る者としては、とても、秋葉市長のような「楽観主義」者にはなれそうもありません。

せめて、今回の市営住宅からの暴力団員退去について、「事故」あるいは「事件」が無いように祈りたいと思います。

広島市が組員退去求め提訴 条例を基に全国初 '07/4/18 中国新聞地域ニュース

 広島市南区の市営住宅に指定暴力団共政会高塚組組員(40)が居座っている問題で、市は十七日、組員に対して住宅の明け渡しなどを求める訴訟を広島地裁に起こした。広島県や市などは二〇〇四年六月、公営住宅から組員を排除するよう管理条例を改正したが、立ち退きを求める訴訟は全国でも初めてになる。
 訴状や市などによると、組員は南区大須賀町の市営住宅に一九九五年五月ごろ入居。〇四年末には同居の女性を殴打、昨年十月には知人の男性を殴るなどし、いずれも罰金刑を受けた。
 市は昨年十一月から広島県警の協力も得て十数回、組員宅を訪問したり電話をするなどして退去勧告してきた。しかし、退去に応じないため、今年三月末で住宅の使用許可を取り消していた。
 訴えでは、住宅の明け渡しと二月から滞納している二カ月分の家賃(計五万六千四百円)の支払い、明け渡しまでの損害金を求めている。
 公営住宅からの組員排除は、共政会系組長が〇三年、所得制限がある市営住宅に住みながら自宅に一千万円以上の現金を持っていたことなどが発覚し、機運が盛り上がった。組長はすでに退去しているが、県や広島市などが相次いで条例を改正。その後、県内の全市も整備した。
 広島市によると条例が整備されて三年近くになったが、市営住宅には今回の組員を含めて五人が居座っているという。市住宅部は「他の組員にも退去するよう説得を続け最終的には法的な手段に踏み切る」としている。
 広島弁護士会民事介入暴力問題対策委員会の森川和彦委員長は「訴訟では条例の合憲性が争点になる可能性があるが、現実に適用されるルールとして条例に基づいた訴訟が起こされたことで、暴力団排除運動が一歩進む」と評価している。
 ●クリック 公営住宅からの暴力団組員排除
 広島県や広島市が2004年6月、公営住宅の管理条例を改正して暴力団排除規程を盛り込んだ。(1)組員は新たに入居させない(2)入居後に組員と判明した場合は明け渡しを請求できる(3)既入居者には組織脱退を勧告し、応じなければ明け渡しを請求できる―の三つが柱。全国の都道府県、政令指定都市で初めての試みだった。
 毅然と暴力団排除を
 【解説】公営住宅からの暴力団退去を求めた広島市の提訴は、掛け声倒れの暴力追放運動から転換を図るものだ。市の決断は評価できるが、これまで組員の居座りを許し、公営住宅内で事件を招いたのも、条例を設けながら適用を見送り続けてきた弱腰が原因だ。条例施行からすでに三年近く。今度こそ毅然(きぜん)とした態度で、組員排除を実現すべきだ。
 訴訟では条例と、憲法が保障する生存権の解釈が議論され、組員は「暴力団とはいえ人間。生きる権利を奪うことは許されない」などと訴えるとみられる。が、組員をやめれば入居は続けられる。生存権の侵害との主張は、市民感情からも許されないはずだ。
 近隣住民は組員が起こすトラブルをじっと我慢してきた。市は「住民からの苦情はさして聞いていない」というが、この組員が最初に起こした〇四年末の事件では、条例があるにもかかわらず住民からの通報を一年以上放置さえしていた。
 住民は暴力を容認したわけではない。報復を恐れて声が上げにくかっただけだ。市はこれまで、そうした市民の思いに鈍感すぎた。せっかくの条例を形骸(けいがい)化し、暴力追放を掛け声倒れにしてきた。その汚名を返上するには、今回の提訴が大きな第一歩となる。(暴力団取材班)
goo | コメント (0) | Trackback (0)
前の記事へ 次の記事へ
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
規約に同意の上 コメント投稿を行ってください。
※文字化け等の原因になりますので、顔文字の利用はお控えください。
下記数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。この数字を読み取っていただくことで自動化されたプログラムによる投稿でないことを確認させていただいております。
数字4桁
 
この記事のトラックバック Ping-URL
 
http://blog.goo.ne.jp/tbinterface/6bc18836da9686c249fc6d1d049a5949/17

ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません
 
 
 goo ブログ
gooID:
パスワード:
ログイン状態を保持する
ブログの作成・編集 ブログの作成・編集
 gooおすすめリンク
goo トップ
goo ブログ
goo ホーム(SNS)
教えて!goo
goo メール

無料 ブログ作成
ランダムブログ
トレンドランキング

このブログを自分のRSSリーダーに登録して毎日チェックしよう!ブログをリーダで読む


携帯
携帯からもアクセス

QRコード使い方
QRコード対応携帯からアクセスできます