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【社会】

リニアの南ア貫通トンネルは15キロ JR東海想定、新幹線の3分の1

2008年10月4日 朝刊

 2025年のリニア中央新幹線開業を目指すJR東海が、想定ルートで最難関としていた南アルプス貫通トンネルの長さについて、山間部でのリニアの走行性能などを踏まえ、最長15キロ前後と見込んでいることが3日、分かった。10月中に国土交通省に提出する東京−大阪間の地形・地質調査結果とともに、正式ルート決定に向けた重要な判断材料になる。

 旧国鉄は1987年の内部文書で、標高2000−3000メートル級の山脈直下を貫く南ア貫通トンネルについて、当時の新幹線の走行性能を前提にすると、最長47キロが必要としていた。

 一方で、磁力で車体を浮かして走るリニアは摩擦抵抗が小さく、上り斜面の高速走行性能が格段に進歩すると分析。より標高が高い山肌を開口部にすることで、トンネルの長さは新幹線の約3分の1の最長16キロ程度に抑えられるとしていた。

 JR東海はこれらのデータを基に、土木技術の進展などを検証。走行時の安全性などを総合的に踏まえ、現在の技術では最長15キロ前後での貫通が可能と想定した。

 国内では既に、JR北海道の青函トンネル(約54キロ)、東北新幹線の岩手一戸トンネル(約26キロ)などの建設実績があり、実際の掘削距離が仮に延びたとしても「技術的には問題ない」(幹部)としている。

 JR東海はこれとは別に90年から、南ア周辺を含む想定ルートの地形・地質調査を進めており、中央構造線(大規模断層)の影響を最小限にとどめるには、山脈の南縁へのトンネル設置が有効と判断。花こう岩などの固い地盤で地質が安定し、岩盤が崩れやすい「破砕帯」の規模が小さく、地質面でもトンネル掘削に支障はないとみている。

 同社は近く、3つの想定ルートの地形・地質調査結果を国交省に提出する予定。同省はこれを受け、輸送力や施設の技術開発、建設費などの調査指示を年内にも出す方針で、リニア計画は実現への大きな節目を迎える。

 【リニアの想定ルート】 JR東海が1990年から地形・地質調査を進めているのは、南アルプスの北側を通り長野県の木曽谷を南下するAルート、同県の伊那谷を通るBルート、南アルプス貫通で東京−大阪を最短距離でつなぐCルートの3ルート。葛西敬之会長は今年2月の講演で「リニアは南アルプスの山の中をぶち抜く」と述べるなど、Cルートの採用に強い意欲を示している。これに対し、沿線自治体からはルート決定や中間駅について意見調整を求める声が出ている。

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