全国の自治体の財政悪化度をチェックする二〇〇七年度決算の財政四指標が、総務省から発表された。指標が定められた基準を超え、破たん状態を示す赤信号の「財政再生団体」には北海道の夕張市と赤平市、それに長野県王滝村の三市村が該当し、黄信号の「早期健全化団体」には和歌山市など四十市町村が含まれた。
岡山、広島、香川各県内の市町村に基準超えはなかった。県レベルでは、全国四十七都道府県とも基準をクリアした。
財政四指標の発表は、〇七年六月に成立した自治体財政健全化法に基づいて行われた。夕張市のような巨額の借金隠しや破たんを未然に防ぐために、財政状況を透明化するとともに分かりやすく示し、議会や住民による監視の強化を狙っている。
四指標は、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率で、自治体が出資する第三セクターや公社などまで含めた財政状況がつかめる。数値が大きいほど財政が悪化しており、一つでも基準を超えると早期健全化団体に移行し、その後、さらに悪化すれば財政再生団体になる。〇七年度決算では数値の公表が行われるだけだが、来年秋にまとまる〇八年度の決算からは破たん判定がスタートする。
実際に早期健全化団体になると健全化計画の策定などが義務付けられる。財政再生団体入りしてしまうと事実上、国の管理下に置かれる。自治体の裁量は大幅に制限され、有無を言わせぬ財政削減を強いられることになろう。
地方は、これまで以上に緊張感を持って財政運営をしなければならない。〇七年度決算では基準内に収まった自治体も決して安心はできない。景気の先行きに悲観論も出てきた。財政を取り巻く環境はますます厳しさを増している。
各自治体は、これまでも行財政改革に取り組んできた。人件費を削り、新規事業を手控え、継続事業の見直しも進めた。改革疲れがいわれるほどである。財政の健全化は大切なことだが、一層の改革で福祉や医療などにまで切り込み、行政サービスの低下によって住民の安全や安心が脅かされることになっては問題だ。
地方分権が進まないことが腹立たしい。国から地方へ十分な権限と確かな財源が移譲され、自治体が自由度の高い財政運営を行えるようになってこそ、責任が取れる。いまだに中央省庁の指示や関与が強いのに、数値基準で縛り、削減ありきの財政健全化では、地方の反発を招くばかりであろう。
政府の総合経済対策を盛り込んだ二〇〇八年度補正予算案の提案理由説明が衆院予算委員会で行われ、来週の審議入りを与野党で合意した。
補正予算案は、総合経済対策を実行するための歳出一兆八千八十一億円の追加が柱になっている。原油高などの打撃を受けている中小企業の活力向上のため、保証制度拡充の四千億円など計四千四百六十九億円を確保したほか、省エネ促進など農林水産業の強化に千五百十億円、高齢者医療の見直しに二千五百二十八億円、学校耐震化に二千四十七億円を計上している。
ただ、総合経済対策が決まったのは八月末だ。それ以降、景気後退への懸念が強まり、米国の金融危機が、わが国の実体経済を脅かすなど、事態は急変している。このままで十分な手当てができるのだろうか。
麻生太郎首相は内閣の最優先課題として、景気対策に取り組む姿勢を示している。代表質問でも補正予算成立を「焦眉(しょうび)の急」と強調した。さらに、補正予算の効果を見極めた上で「必要に応じ、さらなる対応も弾力的に行う必要がある」と述べるなど追加措置にも言及している。
一方、民主党の鳩山由紀夫幹事長は「中途半端なばらまきで景気回復にならない」と批判し、「賛否は予算委員会の質疑を通して決める」と述べた。確かに、過去には景気対策として大型補正を組みながら思うように効果が上がらず、財政赤字を膨らませたこともある。今回も財源不足を補うため、建設国債を三千九百五十億円追加発行する。無駄のない効率的な予算かどうか、検討が必要だ。
補正予算案の成立を急ぐあまり審議をおろそかにしてはなるまい。景気対策に十分な効果があるか、予算案の中身をしっかり議論すべきだ。
(2008年10月3日掲載)