キヤノン(東京都大田区)で行われていた偽装請負を告発し8月末に期間社員の雇い止めとなった「キヤノン非正規労働者組合」メンバー、宮田裕司さん(29)が1日「雇い止めは解雇権の乱用で告発への制裁、組合の切り崩しを狙ったものだ」と、同社に対し地位保全と月約28万円の賃金支払いを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。
申立書などによると、宮田さんは06年3月に宇都宮市の人材会社「アイライン」からキヤノン宇都宮光学機器事業所に派遣され、5月に派遣から請負契約に変わった。だが、労働実態はキヤノンから指揮、命令を受ける派遣のままだったことから、11月に栃木労働局に偽装請負だと内部告発した。同労働局は翌年偽装請負と認定し是正指導した。宮田さんはその後期間社員として契約、6カ月の契約を1度更新したが、08年7月に8月末での雇い止めを通告された。宮田さん側は偽装請負の告発などの組合活動への報復もあったとして「解雇権の乱用」と訴えている。
キヤノン広報部は「8月末で契約満了となり更新しなかったのは事実だが、本人にはきちんと理由を説明している。訴えの中身は把握していないのでコメントできない」としている。【東海林智】
毎日新聞 2008年10月2日 東京朝刊