JR東京駅からブルトレが消える--。戦後の復興期から約50年間にわたって首都圏と九州方面を結び続けたブルートレイン(寝台特急)「はやぶさ」(東京-熊本間)、「富士」(東京-大分間)が来年3月のダイヤ改正で姿を消す。東海道・山陽線を併結運転してきた最古参のブルトレは新幹線や航空機との競争に敗れ、廃止に追い込まれた。東京駅を起点としたブルトレは全廃となり、1958年10月の運行開始以来、半世紀の幕を下ろす。【斎藤正利】
■「はやぶさ」「富士」
ブルトレは、客車がブルーの寝台特急。東海道・山陽新幹線の速度向上や航空各社の割引、低料金の長距離高速バスの参入で苦戦を強いられてきた。JRグループは列車の統廃合を進めたもののブルトレ発祥の東京駅始発着にこだわった。一方で、鉄道ファンの要望を受け、九州方面唯一のブルトレを存続してきた。
しかし、運賃・料金の割高感や車両の老朽化、車内サービスの低下もあって敬遠され、07年度の乗車率は87年度のJR発足当初と比べて5分の1以下の10%台に落ち込んだ。季節によっては「空気を運んでいる状態」だった。このため11年春の九州新幹線鹿児島ルート全線開業を控え「ブルトレの社会的使命は終わった」と判断した。
勇退が決まった「はやぶさ」は1958年10月、東京-鹿児島間に特急列車としてデビュー。2年後にブルトレ編成となり、48年間にわたって東京-九州間をひた走った。ロビーカーを連結するなど最先端の設備を整えた青い客車を重厚な電気機関車がけん引し、鉄道ファンの人気を博した。05年3月から「富士」と東京-門司間を併結運転している。
もう一つの「富士」は戦前の1929年9月、東京-下関間の特急列車に付けられた国内最古の列車名を継承。東海道新幹線が開業した64年10月に運行を開始した。
「はやぶさ」の所要時間は17時間46分、運賃は2万4150円(B個室)。「富士」は17時間14分、2万3730円(同)。
来春以降も引き続き運行されるブルトレは「北斗星」(上野-札幌間)▽「あけぼの」(同-青森間)▽「北陸」(同-金沢間)▽「日本海」(大阪-青森間)の4本となる。
毎日新聞 2008年10月3日 東京夕刊