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【健康】

女性の尿もれ骨盤臓器脱(1) 腹圧性尿失禁の手術 9割が治癒か改善

2008年10月3日

 四十歳以上の女性の四割が経験するという尿もれ。悩みながらも泌尿器科への受診をためらったり、「年だから」とあきらめたりしている人は多い。近年、負担の少ない手術で治せたり、薬で症状を抑えたりする治療が進んできた。同様に悩みの多い骨盤臓器脱とともに四回にわたって取り上げる。初回は女性特有の腹圧性尿失禁の手術治療。 (野村由美子)

 京都市在住の放送作家秋田千枝さん(45)は三十八歳の春、ひどい風邪をひき、くしゃみや咳(せき)をするたびに下着が湿ってしまうのに驚いた。雑誌や本を持って歩くとまた−。好きな映画も笑うたびにもれて足が遠のいた。「もっと年配の人の病気では? 出産もしていない私がなるなんて」。誰にも相談できないまま、仕事にも集中できなくなっていた一年後、たまたま眼科を受診した病院の掲示板で「尿もれが治る手術」を知った。

 女性泌尿器科で腹圧性尿失禁と診断され、中部尿道スリング手術(TVT手術)を受けると、もれはなくなり「悩みにとらわれていたのがうそのよう。今もまったく平気です」と患者の相談に乗る活動に参加する。

 尿もれに悩む女性の約七割が、おなかに力が入るともれる腹圧性の症状を持つ。女性の尿道は長さ四センチしかなくもれやすい。骨盤前部の恥骨から後方の尾骨の間にハンモック状にある筋肉群と靱帯(じんたい)などが膀胱(ぼうこう)や子宮、直腸といった骨盤内臓器を支えているが、その骨盤底の組織がゆるむと、腹圧が掛かった際、膀胱と尿道が膣(ちつ)の方に動いて開き、もれてしまうのだ。妊娠や出産、肥満、更年期の女性ホルモン減少や加齢で骨盤底が緩んだり、傷んだりする。

 東京女子医科大東医療センター泌尿器科講師の巴ひかる医師によると、一九九九年から保険適用されたスリング手術はポリプロピレンのメッシュ状テープを中部尿道の下にゆるく通し、腹圧で下がってぐらぐらする尿道を支えて、もれを防ぐ。

 膣の前壁を一・五センチほど、恥骨の上辺り二カ所を一センチほどだけ切開してテープを通す方法で体への負担が少ない。同センターでは、手術後一時間で飲食が可能に、翌朝には歩くことができる。ただ、自転車に乗るのは四週間後、重い物(三キロ以上)を持つのは六週間後以降だ。

 各病院で異なるが、手術は局所麻酔や局所麻酔プラス軽い全身麻酔などで行い、二十分前後。入院は一泊から数泊。費用は保険適用で十万円前後が多い。五年後九割以上が治癒か改善を維持しているという。

 二〇〇五年からは同じ原理で、テープを脚の付け根辺りから通すことで、大きな血管や膀胱、腸管を傷つける危険がほとんどないTOT手術が導入され、主流となっている。

 名古屋第一赤十字病院女性泌尿器科部長の加藤久美子医師も出産数年後からもれが気になり、三年前、四十七歳でTVT手術を受けた。「手術で患者さんがすごくハッピーになる」と話す。

 有効なのは腹圧性の場合のみ。別のタイプの尿もれと混合型の症状の場合、症状の度合いに応じて考える。これから妊娠を望む人は手術できない。症状が軽い人やすぐには手術できない人などは、まずは骨盤底筋訓練などで改善を目指す。

 

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