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【第5回】 2008年09月16日

佐川急便、上場準備への焦りか?
貨物航空撤退で負った「多大な代償」

 ギャラクシー立ち上げが決まったのは、上場の検討が本格化する以前。上場を意識した現在の経営戦略と、ギャラクシー設立に力を注いだ当時の経営戦略の中身にはずれがあり、かなり早い段階から事業撤退を検討していたともいわれる。少なくとも、中長期スパンでの投資と考えていた株主各社において、戦略を共有していく“期待”が“失望”に変わったことは間違いない。

 ギャラクシーの第2位株主である三井物産は、日本航空と貨物事業での提携を検討するなど、積極的に複数企業と交渉し、物流事業への投資に並々ならぬ意欲を見せている。佐川とのさらなる連携も選択肢にあったはずだが、ギャラクシー問題で生じたしこりは今後の協力関係の強化に二の足を踏ませることになるだろう。

ヤマト追撃にじわり減速感

 運輸業界は今、合従連衡(がっしょうれんこう)の真っ最中にある。各社がこぞってアジア圏での展開を目指し、機能を相互補完するためのパートナー探しに躍起だ。佐川のライバルである業界首位のヤマトホールディングスもアジア圏へ事業を拡大させて手続きや決済などを含むドア・ツー・ドアのトータルサービスを提供する体制の構築を中期戦略に据え、「国内外で積極的にコラボレートする」(木川眞・ヤマト運輸社長)と明言、提携相手を模索している。佐川と株主企業の悶着は、敵に塩を送るものとなりかねない。

 国内の宅配便市場に目を転じると、2強のヤマトと佐川が伸びを見せているものの、ヤマトを猛追していた佐川にはかつての勢いがない。03年度にヤマトとのシェアの差を3%を切るまで縮めたが、04年度以降は再びじりじりと差が開いているのだ。

 06年3月に持ち株会社制に移行し、宅配依存から脱却するために事業の多角化を進める佐川グループ。ギャラクシー清算のプロセスに漂う不透明感と本業の減速感は、どちらも1兆円企業へと飛躍する過渡期の一時的な歪みなのだろうか。

 いずれにせよ、パートナーとの関係を崩し、社会的信用を落とした代償は大きい。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美)

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