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【主張】メラミン禍 原産地表示の改善も必要
中国のメラミン禍は、幼児用粉ミルクにとどまらず、牛乳、乳製品、それらを原料に使った菓子などの加工食品へと拡大の一途をたどっている。被害もアジアだけでなく全世界に及び、中国製の牛乳、乳製品の輸入禁止に踏み切る国も増えている。
この問題では、なによりもまず中国の責任が問われなければならない。欲得のため、工業原料メラミンを水で薄めた牛乳に混ぜて売った多くの犯人たち、仲介業者、メーカー、地方当局、中央政府それぞれに大きな責任がある。
とりわけ、中国政府の責任は重い。胡錦濤政権には、先の毒入りギョーザ事件を含め、一連の汚染食品問題について、徹底的な実態解明と再発防止策を求めたい。犯人検挙にとどまらず、人命より金もうけを優先するといわれる一部の風潮など、事件の背景にまで踏み込んだ根本的な対策を望む。
今回の事件でも当局による事実の隠蔽(いんぺい)、情報統制があったとされる。これでは問題解決への姿勢が疑われる。北京五輪で誇示した中国の威信にも傷がつこう。
日本政府の対応にももどかしさを禁じ得ない。汚染米の事件も含め、食の安全・安心のため、緊急を要する課題は多い。食品の原産地表示の改善もその一つだ。消費者も強く望んでいる。
食品の原産地表示は、日本農林規格(JAS)法により、生鮮食品に関しては平成12年以降、すべて名称と原産地の表示が義務づけられているが、加工食品に関しては対応が遅れている。
18年以降、加工度の低い食品には原産地表示が義務づけられたが、加工度の高い大半の食品は対象外のままだ。
東京都はこの夏、都消費生活条例を改正し、冷凍加工食品の原材料表示について、重量比で上位3位まで、かつ5%以上の原材料の原産地表示を義務づけた。消費者の知る権利、知りたい要望に応えた先行的措置といえよう。
ただ、原産地表示制度は、国際食品規格(CODEX)と整合性をとる必要があり、それを上回る規制は非関税障壁とされる恐れもある。世界貿易機関(WTO)、世界保健機関(WHO)などと連携した取り組みが必要だ。
また、食品業者には中小企業が多いため、検査や原産地表示にかかるコスト負担の問題も残る。政府が新設を目指している消費者庁の仕事は最初から多い。