十七人目の犠牲者である。一口サイズのこんにゃくゼリーがのどに詰まり、窒息死する事故が兵庫県で起きた。わずか一歳九カ月の男の子という。度重なる悲劇をなぜ食い止められないのだろう。
こんにゃくゼリーは一九九〇年代に売り出された。食物繊維を含む菓子として、健康志向の風潮に乗った。プラスチック容器からつるっと吸い出せ、手を汚さずに済む。その手軽さがあだになった。弾力が強いため、かむ力の弱い幼児や高齢者が普通のゼリーと同じ調子でのみ込むと、気道がふさがれることがある。凍らせば、弾力性がさらに増す。
窒息死の報告は、九五年七月が最初だった。それから一年のうちに七件続いた。いったん沈静化したものの、二〇〇五年から増えている。国民生活センターは昨年、商品テストを行い「九〇年代半ばに比べ、弾力性や硬さが高まっている」と、行政や業界、消費者に注意を促した。しかしそれが生かされなかった。
全国六十四の消費者団体は共同の緊急声明で、製造や販売の即時禁止を求めている。「販売禁止も検討する」と話していた野田聖子消費者行政担当相はきのう、製造元に自主回収を要請した。
もちだって窒息死することがある、という意見もあろう。しかし厚生労働省の調査によれば、もちによる窒息事故は高齢者がほとんど。こんにゃくゼリーの場合は、十七人のうち十人が七歳以下の子どもだった。幼い命を救う責務は周りの大人社会にある。
欧州連合(EU)や韓国は、既にゼリーへのこんにゃく使用を禁止している。米国やカナダなどは出回っている商品の回収を指示している。
日本では、所管官庁そのものが明らかでない。厚労省は「食品衛生上は問題なし」、農林水産省は「原料表示に問題なし」、経済産業省は「物理的な製品安全の問題ではない」…。縦割り行政が、安全のすき間を生んでいる。
「役所の問題による犠牲者を、これ以上増やしてはなりません」と言って福田康夫前首相が主導した消費者庁設置法案が、今国会に提出された。野党の民主党も、対案を準備している。消費者行政を一元化した組織の早急な実現が望まれる。
業界団体は、あらためて事故防止策を急いでほしい。子どもや高齢者が食べないようにと警告する表示は昨年まで、六割以上の商品で見られなかった。
その後に警告マークは統一したものの、すべてのメーカーが取り入れているわけではなく、表示していても大半は上袋だけにしか印刷していない。容器一つ一つに載せるくらい徹底してもいいのではないか。
誰が食べても大丈夫なようなゼリーの形状や硬さなどの基準づくりにも踏み込むべきだろう。
消費者も、心しなければなるまい。これだけ事故が報道され、心得も指摘されている。気をつけて思わぬ事故を防ぎたい。
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