◎県都の無電柱化 「金沢方式」を加速エンジンに
金沢市の無電柱化検討委員会が低コスト工法を活用した「金沢方式」による基本計画を
今年度中に策定することになった。この計画が反映される二〇〇九年度から五年間の次期無電柱化推進計画は北陸新幹線開業を控えた極めて大事な時期となり、推進計画に求められるのはスピード感である。「金沢方式」を無電柱化の加速エンジンとし、優先順位をつけながら面的、集中的に取り組んでほしい。
金沢市内では国の文化財指定、選定が相次ぎ、城下町の町並みに磨きをかける取り組み
が面的な広がりをみせてきた。歴史的景観、都市景観の価値を損ねる電線類は他の都市以上に大きな課題だが、地中化方式は多額の工事費を要するため、思うように進んでいない。
山出保市長は金沢経済同友会との意見交換会で、地下の浅い層への電線類埋設を可能に
する特区の申請も視野に入れる考えを示した。道路法施行令では車道、歩道それぞれに埋設物の深さ基準が定められているが、例えば車道でも車の通行量が違えば基準は柔軟であっていいはずだ。埋設物を浅くすれば、その分、強度がある素材が必要となり、新たな負担が発生するかもしれないが、コスト面で見合うなら規制緩和を申請する価値は十分にある。
無電柱化検討委では、電線類を軒下や壁に設置する「軒下配線方式」、裏側から配線す
る「裏配線方式」などの活用も探ることになった。これらは導入に適した地域があったとしても、実現には住民合意が欠かせない。その点では今後の無電柱化推進は市民の理解が一層求められることになろう。
電線類の「地中化」だけにこだわらず、クモの巣のような状態を改善する「無電柱化」
を目指すことはコスト面からいっても現実的な対応といえる。非戦災都市ゆえの狭い街路では、道路環境や地域の実情に応じて最適な工法を採用するのが望ましい。金沢にふさわしい仕組みをぜひ定着させたい。
国土交通省も地方の新たな動きに合わせた形で支援策を見直す必要がある。歴史的景観
などの保全と無電柱化を一体的に進められるような施策を打ち出してほしい。
◎産科医療補償制度 産科医不足解消の一歩に
来年一月から発足する「産科医療補償制度」に石川、富山両県では対象医療機関が10
0%参加することになった。出産時の医療事故で重い脳性まひとなった赤ちゃんが生まれた場合、お産にかかわった医師の過失を立証できなくても家族に補償金が出る救済制度であり、産科医の負担軽減にもなるため、産科医不足解消の一歩としたい。
六社の保険会社が制度に参加し、共同保険方式で運営される。お産を扱う医療機関が加
入し、保険料三万円が医療機関から財団法人の「日本医療機能評価機構」を通して保険会社に払い込まれる。一子につき三十五万円の出産育児一時金に三万円が上乗せされ、その分が保険料となるため、医療機関側も産婦側も負担がゼロだ。
不幸にして事故が起きた場合、家族と子どもに一時金として六百万円と、子どもが二十
歳になるまで毎年百二十万円、合計三千万円が支払われる。
この制度ができた背景には、お産時の事故をめぐって紛争が起きやすく、しかし、医療
事故であるとの立証が困難という事情がある。加えて、お産を扱うことが激しい仕事である上に、場合によってそれが紛争につながるのは割に合わないとして産科医志望が減り、不足になった大きな原因にもなったといわれる。
厚生労働省は医療広告を医療法で規制しているが、例外として制度開始に合わせ、年内
にも加入した医療機関やお産施設の広告を可能な限り認めることに踏み切る。利用者にサービス内容や実績を分かるようにする目的からであり、制度を生かすために必要なことだ。補償制度や広告内容の拡大は画期的なことである。全国的にも100%加入を目指して努力してもらいたい。
折から医療分野の予期しない出来事を、いきなり刑事事件として捜査するより中立的な
調査委員会で原因を突き止め、再発防止に生かす目的の、いわゆる医療版の「事故調査委員会」の設置について最終的な検討も行われている。補償制度と事故調を車の両輪にしたいものだ。