日本の首相選びのメカニズムが変わってきている。そんな思いを今回の麻生政権誕生の取材であらためて実感しました。
新政権ができる過程の取材は、前回東京支社に勤務していた二〇〇一年以来です。その時は地元選出の故橋本龍太郎元首相や小泉純一郎氏らが自民党総裁を争いました。
当初は、当時の最大派閥・橋本派をバックにした橋本氏が優位と見られていました。実際、一流ホテルでの出陣式に各種支持団体がそろうなど、大派閥の力を見せつけました。しかし、選挙戦は地方票から予想外に展開。派閥の論理はなすすべもなく崩れ、小泉氏が地滑り的に勝利したのを目の当たりにしました。
それが大きな変化の始まりでした。七年後の今回、旧橋本派である津島派の石破茂氏は、議員会館で小ぢんまりした出陣式を行うなど、かつての派閥選挙とは様相が一変していました。
脱派閥的な動きが定着する一方で、旧来型の派閥選挙の側面も残っていたのが、今回の結果だったように思います。
結局、麻生太郎氏の圧勝でしたが、ふに落ちない思いもぬぐえません。麻生氏は、前年に福田康夫氏、その前年に安倍晋三氏に敗れています。政策的に大きく違う候補が一年ごとに大量得票した。それは政策で選ばれたのではなく、時々の党内情勢で左右されたことを示した形です。
自民党総裁がいつまで首相に直結するかは別にして、政策によって首相が選ばれるのが、本来あるべき姿でしょう。日本の首相選びにさらなる変化が求められます。
(東京支社・岡山一郎)