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【異能対談】佐藤優VS楠城華子 “諜報機関と女優の微妙な関係”(上) (1/5ページ)
作家で起訴休職外務事務官の佐藤優氏と東大卒女優、楠城華子さんの異色対談が行われた。インテリジェンスの世界から、官僚、国家などさまざまなテーマについて、佐藤氏からは脳みそをズバッと刺されるような「異見」「異論」が次々に開陳され、その語り口に思わず吸い込まれそうな楠城さんは、ちょっとタジタジの様子ながらも、突き抜けた感じの応答がなかなかだった。
楠城「すごいドキドキしています。友人とかに佐藤優さんと対談すると言ったら、『すごい!』とか言われて。きょうは佐藤さんファンの友人一同を代表してお話をうかがいます」
佐藤「前のほうが恐い人間と会うのでもっとドキドキしたのではないでしょうか。『外務省のラスプーチン』とかいわれてるころ」(笑い)
楠城「佐藤さんというと、記憶術とか速読術がすごいということなんですけど、どうやって鍛えたんですか」
佐藤「楠城さんは東大卒だから、記憶をして、それを再現する訓練ができていると思います。ただし、記憶は目的がないと定着しない。今、私は早稲田で先生やってるんですけど、ソ連の崩壊、ロシア革命、ウェストファリア条約がいつあったか問題を出したんですが正答率は5%でした。この学生たちはもともと記憶力はいい。しかし、国際政治の基本中の基本の年号を覚えていない。それが本当に必要な知識と思っていないからです。人間の記憶というものは本当に必要でないものは記憶しないんです。受験に合格するために、その情報を必要と考える人は、目的を達成すると記憶し続けられないんですよ」
楠城「へー、すごい。速読術はどうですか」
佐藤「速読術というのは逆説なんですよ。熟読が大事なんです。ところが人間は熟読できる本の数は限られている。速読術とは熟読する本の時間を確保するためにあるものなんです」
《ここで、佐藤氏が実際に速読術を披露。数十秒で速読し本の内容を要約して話し出す佐藤氏に楠城さんは「すご〜い」を興奮気味に連発》
佐藤「どこを読んでどこを読まないかが重要なんです。速読術とは熟読術がつけばおのずと備わってくるんですよ」
楠城「モスクワのインテリの方たちはこういうことできるんですか」
佐藤「できます。ロシアの教育では暗唱がほとんど。小学校4、5年生で600ページくらいの暗唱をさせ、テストの時はそれをそのまま書かせるだけ。ソ連時代からそう。イデオロギー的に正しいことが教科書に書いてあるから、それを丸ごと覚えればよい。自分の頭で考える必要がない。人間の頭は非常に不思議にできていて、覚えて反復ができるようになると、自ずから考えるようになって、鵜呑みにしないようになる。北朝鮮でも、ソ連と同じ暗記中心の教育システムをとっているから、自分で考える力がついちゃうことでしょう。案外、北朝鮮の詰め込み教育が体制崩壊の引き金を引くかもしれません。丸暗記というのはある程度までいくと発酵し始めるわけです」
楠城「次に、私は、スパイに非常に関心があります。情報収集活動の中で情報のバーターというのはあるんでしょうか」
佐藤「情報というのは非対称で交換が成立します。例えると、オレンジが1つあって、実を食べたい人と、皮でマーマレード作る人との間では、情報の交換は成り立つんです。女優さんの仕事でもそういうところあるでしょう。何かを出して、何かを得られるようなところ。女優さんの仕事って、インテリジェンスの仕事の感覚を持ってると思う」
楠城「そうですね!ところで、インテリジェンスの仕事って究極には誰の指示なんでしょうか」