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【社会】

二審も国に賠償命令 大和管財訴訟 『規制権限を不行使』

2008年9月27日 朝刊

 破たんした抵当証券会社「大和都市管財」(大阪市)グループによる巨額詐欺事件をめぐる国家賠償請求訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は二十六日、一審大阪地裁判決を上回り、全国の原告六百二十七人について、国に約十五億五千八百万円の支払いを命じた。判決理由で小田耕治裁判長は「近畿財務局は適切な調査をせず、あえて漫然と同社の登録を更新した」とした上で、「監督規制権限の恣意(しい)的不行使と言わざるを得ず、過程は不可解で、裁量逸脱の程度は著しい」と財務当局の責任を厳しく指摘した。

 消費者の財産被害で、国の規制権限不行使の責任を認めた判決は高裁レベルで初めてとされ、消費者保護の流れがいっそう進みそうだ。

 昨年六月の一審判決は二百六十人について約六億七千万円の支払いを命じていた。

 旧抵当証券業規制法は、三年ごとの更新登録で財務内容に問題があれば「登録を拒否しなければならない」と規定。裁判では、財務局による一九九七年十二月の更新登録の適否が争点になった。

 高裁も一審同様、更新以降の抵当証券購入分に関し、国の賠償責任を認定。その上で、一審敗訴の原告のうち三百六十七人についても「管財人の回答書で購入が認められ、国側の具体的な反証はない」と請求を認めた。

 判決によると、近畿財務局は九七年、大和都市管財を立ち入り検査し、グループ全体で大幅な債務超過に陥っていることを把握、同年十月に業務改善命令を出した。同社からは実現可能性の乏しい健全化計画しか示されなかったにもかかわらず、財務局は十二月、更新登録を認めた。

 また判決は当時、財務局の理財部次長は更新登録前に破たん処理に入ることを考え、速やかに改善命令を出す準備をしたのに、局長の介入で約五十日も遅らされ、内容も大幅に後退させられた、と指摘した。

<大和都市管財事件> 不動産売買やゴルフ場経営の関連会社でグループをつくっていた抵当証券会社「大和都市管財」が2001年4月に破たん。大阪府警が出資法違反容疑で一斉捜索、同年11月、詐欺容疑で豊永浩元社長らを逮捕した。被害者は高齢者を中心に約1万7000人、被害総額は約1100億円に上り「第2の豊田商事事件」と呼ばれた。約29億円分が立件され、豊永元社長は04年3月、大阪地裁で懲役12年の判決を受け、その後最高裁で確定した。

 

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