二審でも勝訴し会見で笑顔をみせる(左から)犀川千代子・全国弁護団代表、原告の畔上徹太さん、櫛田寛一・大阪弁護団長、原告の石黒杉雄さん=26日午後、大阪市北区、溝脇正撮影
01年に経営破綻(はたん)した抵当証券会社「大和(だいわ)都市管財」(大阪市)による巨額詐欺事件で、被害者が、国が監督を怠ったとして賠償を求めた訴訟の控訴審で、大阪高裁は26日、計約15億5880万円の支払いを命じる判決を言い渡した。小田耕治裁判長は昨年6月の一審・大阪地裁判決以上に当時の大蔵行政の過失を厳しく非難。救済範囲も広げて賠償額を一審の計約6億7千万円から大幅に増やした。
原告631人(請求総額約17億円)のうち4人以外の請求が認められた。大規模な個人財産の被害で、高裁レベルで国の賠償責任を認めたのは初。購入者自身が負うべきリスクについての判断は一審と同じで、国の過失分を4割とした。
裁判の焦点は、旧大蔵省近畿財務局が97年12月、当時の法律で義務づけられた3年ごとの抵当証券業の更新登録を認めたことの是非だった。
判決は財務局の内部資料などから、大和都市管財が詐欺的商法を繰り返し、多額の累積赤字を抱えながら経営状態を偽っていたことを財務局は94年ごろ、すでにおおよそ知っていたと指摘。担当課長が95年に業務改善命令を出そうとしたが、抗議されて撤回したことも一審と同じく認定した。更新登録を認めた97年12月にはグループ全体で105億円以上の債務超過に陥っており、更新は拒否しなければならなかったと判断した。
控訴審で当時の財務局理財部次長(57)が新たに「97年夏ごろには破綻の可能性を認識し、早急に業務改善命令を出す考えを財務局長に説明したが、再検討を求められた」と証言したことにも言及。当時の墳崎(つかざき)敏之局長の介入で命令の時期は予定より約50日も遅れ、内容も大幅に後退したと認定し、問題の更新登録について「財務局は適切な検査を怠り、あえて漫然と更新登録をした。監督規制権限を恣意(しい)的に行使しなかったともいえ、不可解というほかない」と非難した。さらに、購入者保護の観点からみてこの更新登録は著しく合理性を欠き、違法だったと結論づけた。
救済対象については一審判決が「問題の更新登録以降(98年1月以降)の新規購入者」に限った点を変更した。
97年12月以前からの継続購入者について一審は「損害額の立証がない」として請求を退けていた。これに対し、高裁は「(完全な『乗り換え購入』ではなく)98年1月以降に、現実に追加の現金を振り込んだことがわかれば救済すべきだ」と判断。このため、救済対象者が大幅に増えた。