【第46回】 2008年09月25日
義理人情の麻生内閣、人事で「官邸崩壊」再びの予感
だが、なぜか、筆者には、別の懸念が沸いてくる。注目すべきは、官房副長官や秘書官人事である。
麻生氏が、警察庁出身の漆間巌氏を、事務の官房副長官に据えたことは一種の驚きをもって迎えられた。少なくとも筆者にとってはそうだ。
安倍政権に続いて、再び二橋正弘氏を閣内から弾き飛ばし、霞が関の秩序を無視して、ラインではない官僚を、官房副長官という役人のトップに据える。的場順三官房副長官の人事とまるで同じであり、それが官邸崩壊に繋がった遠因であることは多くの官僚が口にすることだ。
警察庁の役人を事務の副長官にしたことで、秘書官人事にも影響が出ている。
麻生首相は、総務大臣時代、自身のお気に入りであった岡本全勝官房審議官を総務省から官邸入りさせる。
その結果、外務、財務、経済産業、警察の首相4秘書官体制は、変更を余儀なくされる。
財務(浅川雅嗣参事官)、外務(山崎和之総務課長)、経産(柳瀬唯夫企業行動課長)、そして総務と警察を加えて、事実上5つの秘書官ポストということになる。
人事は政権の命運を左右する。
過去の内閣の例を持ち出すまでもなく、人事は、政権にとって最大の浮揚策にもなるし、逆に崩壊にも繋がる。
「お友だち内閣」と揶揄された安倍首相は、周囲に対してあまりに優しすぎた。それが手柄合戦になり、結果、官邸は崩壊した。
一方で、冷徹で孤独な小泉首相こそ、もっともうまく人事権を使いこなした政治家のひとりだ。決して情に流されず、敵をつぶすためならば、恩義のある功労者であってもいとも簡単に利用する。
「花と龍」を愛する麻生新首相に、そもそも小泉首相ばりの冷徹さを求めること自体が酷なのかもしれない。だが、それでも人事は怖い。事務の官房副長官などをみれば、まるであの「お友だち内閣」の最初と同じではないか。
人事は、断行前までは求心力になるが、終わった瞬間、遠心力に変わる。とりわけ、官房副長官を斬ったことは、全霞が関を敵に回すシグナルになることもある。
あの官邸崩壊が繰り返されないことを祈るばかりである。
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上杉隆
(ジャーナリスト)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」「小泉の勝利 メディアの敗北」「田中真紀子の恩讐」など著書多数。
永田町を震撼させる気鋭の政治ジャーナリスト・上杉隆が政界に鋭く斬りこむ週刊コラム。週刊誌よりもホットで早いスクープ情報は、目が離せない。