秋の食卓の風景が、今年はひと味違う。小麦の価格高騰と反比例して好調な新米、明暗を分ける秋魚、中国産が敬遠されるマツタケ…。食をめぐる問題が次から次へと表面化する中、その余波で「秋の味覚」も連鎖反応を起こしている。 (社会部・中山雄介)
福岡市のスーパー・ショッパーズダイエー天神店によると、9月の米の販売量は前月比1割増。小麦の高騰に伴って、米飯が見直され、パンやめん類の値上げが本格化した5月以降、右肩上がりを続けているという。
九州有数の米どころ・福岡県久留米市のJAくるめでも、9月の出荷量は例年の1.2倍に。汚染米問題による風評被害を心配する声もあったというが、かえって安心感のある国産米に需要が集まり、同JAは「新米の収穫はこれからが本番。好調が続きそう」。
1匹98円‐。福岡市のスーパーの店頭に並ぶサンマの値段だ。福岡中央市場(同市)によると、9月に入り日本近海で豊漁が続き、平均卸値は8月の約4分の1で推移。燃料高が漁業の不振を招き、魚介類の価格が全体的に上がっているだけに、同市の主婦藤田敏江さん(58)は「安くて体にもいい。食卓の救世主ですね」とほくほく顔。
一方、秋サケは例年より2割ほど高め。九州魚市場(北九州市)では、7割強を占める輸入ものが輸送費高騰のあおりを受けており、北海道から空輸されるサケも例外ではないという。
秋の味覚の王様・マツタケにも異変。青果卸の福岡大同青果(福岡市)によると、これまで入荷量の半分以上を占めていた中国産が半減。ギョーザ中毒事件などで「中国の食品」全体に不信が広がり、小売店が仕入れを控えているという。代用として期待された北米産も、燃料高の影響で昨年の5分の1ほどの入荷にとどまっているという。
このためマツタケは全体に品薄で、国産も高値傾向。柳橋連合市場(同市)でも中国産の10倍以上の1本7500円で店頭に並び、買い物中だった近くの主婦(60)は「ますます高根の花ですね」とため息をついた。
=2008/10/02付 西日本新聞夕刊=