日本盲導犬協会は1日、中国地方初の盲導犬訓練施設「島根あさひ盲導犬訓練センター」(浜田市旭町丸原)の開所式を行った。訓練センターは、国内4番目のPFI刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」内に開設。同刑務所では受刑者が盲導犬となる子犬を育てる矯正プログラムが行われ、日本盲導犬協会が全面的に支援する。開所式には法務省関係者や県内外の盲導犬ユーザーも駆けつけ、「福祉」と「矯正」をつなげる場として期待が高まっている。【小坂剛志】
開所式には、法務省や刑務所関係者、県内外の盲導犬ユーザーなど約120人が参加。井上幸彦理事長は「盲導犬となる子犬を育てることで、受刑者が社会貢献の喜びを感じ、社会復帰につながると確信している。また、中国地方初の訓練センターとして、情報発信基地となり、さらに盲導犬への理解が広がることを期待したい」と述べた。
訓練センターでは、年間約10頭の盲導犬の育成を計画。訓練を受けて盲導犬になれる犬の割合は約4割といい、年間約30頭を訓練する。PFI刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」は、盲導犬となる候補の子犬を受刑者が育てるという矯正プログラムを日本で初めて実施。受刑者が日本盲導犬協会の訓練士のアドバイスを受けながら、生後2カ月ごろの子犬を約10カ月間、飼育する。1歳まで育てられた犬は、訓練センターで盲導犬になるための訓練を受ける。
プログラムでは、受刑者が月曜午前から金曜午後まで、子犬と24時間生活を共にし、エサやりやブラッシングなどの世話をする。子犬は受刑者の個室で寝起きする。金曜午後~月曜午前は地域ボランティアに子犬を預け、受刑者はボランティアと手帳で飼育に必要な情報を交換する。
現在、国内で活躍している盲導犬は約1000頭。一方で、すぐに盲導犬を希望している視覚障害者数は約4700人とされており、受刑者の「矯正」に加え、頭数が不足している盲導犬の普及につながるというメリットもある。盲導犬ユーザーで視覚障害者の三輪利春さん(56)=松江市雑賀町=は「県内に訓練施設ができることは、ユーザーとしても便利でありがたい。島根県全体で福祉のまちづくりを目指すきっかけになれば」と期待していた。
同刑務所は1日から運営を開始。実際に受刑者が収容されるのは開所式が行われる19日以降となる。プログラムが開始されるのは来春以降で、希望した受刑者の中から選抜。3頭の子犬を、1頭につき主担当1人、副担当4人の態勢で飼育する予定という。
毎日新聞 2008年10月2日 地方版