老朽化のため故障が続発してる放射線を照射する機器リニアック=1日、うるま市の県立中部病院
本島中部の地域がん診療連携拠点病院に指定されている県立中部病院(平安山英盛院長)で、がん治療に使う放射線治療装置が老朽化のため故障が相次ぎ、8月末から新患者の受け入れを停止している。がん治療には放射線治療は不可欠で、本島中北部で唯一がん放射線治療装置がある同院では年間で最大500―600人が放射線治療を受けており、受け入れ停止で中北部の患者は南部への通院を余儀なくされている。同院は「がん診療連携拠点病院でがん治療ができなくなる」と危機感を募らせる。同装置は約4億円と高額なため、県立病院を運営する県病院事業局は「現場と話し合い、実態を把握してから優先順位をつけて対応したい」と話しているが、具体的な機器購入のめどは立っていない。
放射線治療は外科手術、化学療法と組み合わせて行われ、ほとんどのがんに有効な治療方法。特に早期がんでは切らずに放射線による治療が主流となっている。放射線の照射時間は10分ほどだが、1カ月半―2カ月は連日の通院が必要で、遠距離からの通院は患者や家族には大きな負担となる。
中部病院の装置は購入から9年半が経過し、すでに6年の耐用年数を3年過ぎている。老朽化で故障が頻発しており、昨年4月2日―今年8月22日までに99回故障した。佐久川哲放射線技師長は「何とか治療を行っているが、次々に起こる故障で復旧に2時間以上かかることもあり、患者を待機させるなど迷惑をかけている」と説明する。予約患者は琉球大学医学部付属病院(西原町)や県立南部医療センター・子ども医療センター(南風原町)などに紹介したが、中北部の患者の中には遠距離通院を避けるため、病院近くにアパートを借りて治療を受けている例もあるという。
平安山院長は「医師や技師などスタッフがそろっているのに医療機器がないため治療ができないのはおかしな話だ」と憤る。また地域がん診療連携拠点病院は手術、放射線療法、化学療法、緩和ケアを提供する医療体制を有していることが指定要件に盛り込まれていることに触れ「県は中部病院を拠点病院と推薦したなら、責任を持ってサポートすべきだ」と行政に早期対応を求める。
(玉城江梨子)
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