今、売上が1億円で、2000万円の利益を上げている会社があります。この会社の売上が2倍になったとき、利益はいくらになるでしょうか。
答えは、「これだけでは分からない」です。少なくと単純に2倍(4000万円)とはいきません。
――●変動費と固定費
上の例で、利益が2倍になるのは、すべての費用が売上に比例する場合です。売上・費用がともに倍になれば、当然、利益も倍になります。
しかし現実には、費用はすべてが売上に比例するものばかりではありません。売上水準に関係なく、一定額発生する費用もあります。たとえば、コンビニを考えた場合、商品の原価は売上に比例しますが、店員の人件費は売上に比例するわけではありません。
費用のうち、売上に比例して増減するものを「変動費」といいます。商品や原材料の原価、販売手数料などがその例です。一方、売上に関係なく一定額発生する費用を「固定費」といいます。 人件費や償却費がその代表例です。
(但し、実際の費用の発生の仕方はもっと複雑です。電話代にように基本料金プラス従量制という形態もあれば、一定範囲ごとに階段状に増減する費用もあります。)
――●損益分岐点
このように売上との対応関係で費用を分析するとき、売上から変動費を引いたものを「限界利益」といい、限界利益の売上に対する割合を「限界利益率」と呼びます。 |
上図を見れば分かるように、企業にとって利益が出るか出ないかは、限界利益で固定費を回収できるか否かで決まります。したがって、利益を出すための方法は2つです。@製品・サービスの限界利益率を高めるか、A固定費を小さく身軽にするか、の2つです。
さて、この固定費・変動費の分類に関連して、収益がトントンになるときの売上を損益分岐点(売上高)といいます。上図で考えると、それは限界利益と固定費が等しくなる売上高を意味します。したがって、これを定式化すれば、
限界利益(=売上高x限界利益率)=固定費
これより損益分岐点売上高は、次の算式で求められます。
損益分岐点売上高=固定費/限界利益率
この式から言えることは、固定費が大きくなれば損益分岐点も高まり、逆に限界利益率を高めれば損益分岐点は低くなる、ということです。
これら一連の、売上-固定費-変動費に関する分析を、損益分岐点分析もしくはCVP分析といいます。管理会計の中で、とりわけベンチャー企業にとって、もっとも基本的かつ重要なテーマです。