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米国ゴルフツアー “たった一言”ストーリー

前進のための失敗 ―― ティム・フィンチェム米PGAツアー会長

We'll consider everything.(何だって見直すよ)

ティム・フィンチェム米PGAツアー会長

We'll consider everything. ―― ティム・フィンチェム米PGAツアー会長

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(写真:田辺 安啓)

 米PGAツアーは最終戦のツアー選手権が終了し、フェデックスカップシーズンも閉幕した。フェデックスカップの締め括りとなったのは4試合にわたるプレーオフ。そのプレーオフの最終戦がツアー選手権だったわけだが、こう書いただけでも読んでいる方々は「えっ、何々?意味がよくわからない」と感じるに違いない。

 そう、何ともわかりにくい。なぜ、こんなにわかりにくくなってしまったのかと言えば、建て増しを繰り返したビルの構造が妙に複雑になるのと同じこと。元々のツアースケジュールをある程度、生かしながら、昨年、フェデックスカップという新システムを設け、さらに、フェデックスカップの中にプレーオフを新設。しかし、その最終戦には従来のシーズン最終戦だったツアー選手権を持ってきたため、何とも複雑になってしまったわけだ。

 そして、「何か変だぞ」と感じると、すぐさま指摘するのがアメリカだ。選手たちの間から「ツアー選手権は、もはやシーズンの最終戦ではなくフェデックスカップの最終戦なのだから、大会名はフェデックスカップ選手権のような名前に変更したほうがいいんじゃないの?」という声が上がった。

 これを聞いたPGAツアーのティム・フィンチェム会長が、どんな反応を示したか。彼はすぐさま、こう言った。

We'll consider everything.
(何だって見直すよ)

 実を言えば、「何か変だぞ」は大会名だけではない。大物選手たちを全員出場させようという目的でポイント配分を今年から大幅変更したプレーオフに対しても「おかしい!」という批判が殺到した。

 ツアー側の思惑通り、プレーオフ第1戦から大物たちがこぞって参加したところまでは問題はなかった。しかし、今季メジャー2勝の大健闘ぶりを披露したパドレイグ・ハリントンがプレーオフでは振るわなかったためにツアー選手権に出られなくなった。

 シーズンを通じて一番功績をあげた選手が最後の最後に報われないのはアンフェア。日本の今田竜二もプレーオフ突入時点ではランク9位だったが、プレーオフ3試合だけで26位まで後退。最終戦にはぎりぎり出場という運びになった。逆に、プレーオフに入るまではあまり活躍した感がない選手たちが、プレーオフのおかげで最終戦に出られてしまうという結果になった。

 1月のシーズン開幕からプレーオフまでの33週間で活躍した選手の「頑張り」が、たった4週間のプレーオフで萎んでいくのは、やっぱりおかしい。

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このコラムについて

米国ゴルフツアー “たった一言”ストーリー

米国のプロゴルフ界を取材しながら常々感じていることがある。それは、大物選手ほど簡単な言葉で奥深い話をするということだ。奥深いと言っても、哲学めいた小難しい話をするわけではない。選手が口にした一言に、その選手のバックグラウンドや素顔を重ね合わせて咀嚼すると、なるほどと頷ける何かが浮かび上がる。その「何か」は我々の人生にもあてはまり、ときには「目からウロコ」のような効果さえ発揮してくれる。そんなとき、その一言に感激し、その選手の大物ぶりにあらためて脱帽させられるのだ。

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著者プロフィール

舩越 園子(ふなこし そのこ)

在米ゴルフジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、広告代理店勤務を経て、独立。1993年渡米。ニューヨークを拠点に米国のゴルフ界を取材し続け、日本の新聞・雑誌等へ幅広く執筆中。

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