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【社説】

代表質問 早くも街頭演説ですか

2008年10月2日

 麻生首相の代表質問型「所信表明」に、小沢民主党代表は所信表明型「代表質問」で返した。まるで選挙演説のような批判合戦だった。議論は平行線だ。決着はやはり総選挙で、が分かりやすい。

 一日から始まった各党代表質問。麻生太郎首相が所信表明演説で民主党に突きつけた二〇〇八年度補正予算案への賛否などをただす問いに、小沢一郎代表がどう答えるかが見ものだった。

 普段通りの淡々とした表情で小沢氏は登壇した。ただし言葉は辛辣(しんらつ)だった。「自民党総裁が総選挙を経ずに三たび首相の座に座るのは信じ難い光景だ」「首相の演説で唯一はっきりしていたのは民主への誹謗(ひぼう)中傷だけだ」などと。

 首相の質問には直接答えず、総選挙公約の骨格のお披露目をもって回答とした。相手が仕掛けた党首対決の土俵には上がらず、政権交代の必要性をアピールした方が得策との計算からのようだ。

 要点はこうだった。総選挙の争点は無駄遣いを続ける官僚主導の仕組みを続けるか、税金の使い方を国民の手に取り戻すか。民主政権になれば、国の予算の総組み替えなどで二〇・五兆円の新財源を生み出し、子ども手当や農家への戸別所得補償などを一二年度までに三段階に分けて実施する。よって速やかな総選挙を−。

 小沢氏の肩透かしに首相は「誠に残念」とぶぜんとした。補正予算案審議を引き延ばすことのないよう忠告する一方、衆院解散は「私が決める」と言明。わずか数分間の異例の短い答弁となった。

 「麻生対小沢」の“総選挙前哨戦”はすれ違いに終始した。膨張する社会保障費の財源など国民が抱く不安への処方せんに首相からは明確なメッセージがなかった。小沢氏にしても「ばら色」の公約がどこまで実現可能か、素朴な疑念がつきまとった。

 続いて質問した自民党の細田博之、民主党の鳩山由紀夫両幹事長は、互いにけんか腰で批判を繰り広げた。国会が街頭演説の場のようになるのはいかがか。言葉は激しくとも実のある議論を有権者は期待しているはずだ。

 与野党は来週から衆参両院の予算委員会で補正予算案を審議する方向だ。総選挙へ対立点が明確になれば有権者の判断材料となる。

 米国発の金融危機を理由に自民党の一部には“解散先送り論”も出ている。まさかここにきて時間稼ぎでもあるまい。念のため、くぎを刺しておく。

 

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