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【主張】個室店火災 法規制以上の防災意識を
大阪・ミナミの繁華街にある雑居ビル1階の個室ビデオ店で死者15人を出す火災が発生し、大阪府警は客の無職男性を殺人、放火などの疑いで逮捕した。詳しい事情は今後の取り調べを待たねばならないが、動機がなんであれ、多数の生命を奪った行為は断じて許されない。
それとともに今回の火災では、個室ビデオ店やインターネットカフェ、カラオケボックスといった個室型店舗の防災上の問題が改めて浮かび上がった。
個室型店舗については、昨年1月にも兵庫県宝塚市で起きたカラオケボックス火災で3人が亡くなった。それをきっかけに、今月1日から店舗面積にかかわらず、自動火災報知機の設置が義務づけられたばかりだ。
平成13年9月に死者44人を出した東京・歌舞伎町の雑居ビル火災後にも消防法は改正され、消防による抜き打ちの立ち入り検査が可能になった。悪質なテナントへの罰金も最高1億円に引き上げられている。悲劇を教訓に法規制が強化されたのである。
大阪市消防局によると、火災のあった店は設置義務のある消防用設備はすべて適正で、各個室には熱感知器、廊下には煙感知器が置かれていた。消防法上の明らかな欠陥もみつかっていないという。それでも、多くの客が逃げ遅れ大惨事となった。厳しく検証されなければならない。
個室型店舗は構造的に通路や出入り口が狭くなりがちだ。隣室への音漏れを防ぐための防音効果を高め、テレビやビデオの視聴にヘッドホンを利用する店も多い。
このため利用客が火災などの発生に気づくのが遅れ、一斉に避難しようとして混乱が起きる可能性は高い。今回のように未明の火災だと仮眠中の客も多い。十分な通路、出入り口の確保や従業員が適切に避難誘導するための日常的な訓練が重要になる。
個室型店舗は終夜営業で料金も安い。終電車に遅れて仮眠をとる人が多く、長期滞在者も増えているという。利用者は増加しており、経営者は、管理責任の重さを自覚すべきだ。
法律上の規定は、あくまで必要最低限の義務にすぎない。経営者や従業員は防災意識を高め、不測の事態に備える心構えを常に持たねばならない。容疑者への怒りだけで終わらせてはならない事件なのである。