麻生太郎首相の所信表明演説に対する衆院各党代表質問が始まった。民主党の小沢一郎代表は、次期衆院選を強く意識して、民主党のマニフェスト(政権公約)の説明に大半の時間を割き、政権交代の必要性を訴えた。
首相は民主党の国会対応を問いただす型破りの所信表明演説で先制攻撃を仕掛けていた。小沢氏は首相演説を「唯一、具体的なものは民主党に対する誹謗(ひぼう)中傷」と酷評し、「質問」には答えなかった。このままでは消化不良であり、党首討論で議論を深める必要がある。
首相は「小沢代表が自らの所信を述べたことで、私の質問への答えとしたことは誠に残念だ」と述べた。そのうえで2008年度補正予算案への賛否、消費者庁法案への賛否、インド洋上での補給支援活動継続への賛否の3点について回答するよう改めて求めた。
小沢氏は外交・安全保障政策に関して「日米同盟を基軸としつつも、最終的には国連の平和活動によって担保される」などの原則論しか示さなかった。私たちも給油延長法案への対応などを聞きたかっただけに、小沢氏の「答弁」は残念である。
小沢氏は「総選挙の最大の争点はムダづかいを続ける今の税金の使い方を許すのか、それとも民主党を中心とする政権に代え、税金の使い方を変えるのかという選択だ」と強調し、政権公約の骨格を発表した。
この中で、特別会計を含めた予算を全面的に組み替え、09年度には8.4兆円、10、11年度は各14兆円、12年度は20.5兆円の新財源を生み出すと説明。第1段階の09年度にはガソリン税の暫定税率廃止による2.6兆円の減税を実施することなどを明らかにした。
昨年の参院選の政権公約と比べると、4年間の工程表を示したのは前進である。しかしどのようなムダを削るのかは不透明で、より具体的な説明が求められる。
財源問題では首相の説明も物足りない。民主党の鳩山由紀夫幹事長は定額減税や、2009年度からの基礎年金の国庫負担割合を2分の1に増やすための財源をただしたが、首相は「年末までに結論を得たい」などの答弁に終始した。
小沢氏は衆院選前に、日本の針路について国会で十分議論するよう主張した。来週から補正予算案の審議が始まる見通しだが、これとは別に早期に党首討論を開催して、米国発の金融危機への対応などを含めて丁々発止の議論をしてもらいたい。党首討論は首相も望むところだろう。