「アナログ放送をご覧の皆様へ。2011年7月24日を過ぎると……。地デジの準備はお早めに」と語るCMが頻繁に流れる。せかされているようで、不快に思う人も少なくないだろう。11年に地上波放送の完全デジタル化がスタートする。同時に、アナログ放送は廃止される。デジタル放送を見るためには、デジタル対応の新しい受像機に買い替えるか、チューナーを購入しなくてはならない。アンテナの費用も必要な場合があるという。
テレビ離れが叫ばれているなかで、高齢者ほどテレビを見ている層はない。そんな彼らの多くを占める年金生活者には大きな負担だ。一部の生活保護世帯には、無料でチューナーを配布するそうだが、それでも、テレビが全く見られなくなる人たちは数百万人になるという。
電波の有効利用が可能になるデジタル化のメリットはそれなりに理解できるが、とりたてて画像が汚いという話も聞かないアナログ放送を全面廃止にするのはいかがなものだろう。景気対策として、大型消費を作りたいというのが本音か、と疑いたくもなる。理不尽とは思いながらも消費者はデジタル化を受け入れさせられている。
理不尽と言えば、一部の投資家の動きが原油や食料の高騰を招き、食品などの値上げを呼んでいる。一部の人たちの欲のために、なぜ、多くの人たちの食卓が窮地に追い込まれなくてはいけないのか。買わなくても済むものなら、それほど問題は深刻ではないが、生きていく上でなくてはならない食料や燃料だけに根は深い。不況を脱しても年収が上がらない状況の中で、様々な痛みを負わされる日本の消費者が怒りの矛先を向ける場所はないのだろうか。(深呼吸)