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2008年10月2日

◎日銀の北陸短観 景気後退は長期化の恐れ

 日銀金沢支店の九月の「北陸短観」は、景気の悪化を強く印象づける内容だった。特に 北陸経済をけん引してきた製造業の落ち込みが目に付く。米経済の低迷、中国やインドなど新興国の成長率鈍化を思うと、輸出が急回復するとは考えにくい。

 世界規模の景気後退と、原材料高の二重苦が北陸の輸出産業に大きなダメージを与えて いる。北陸地域の景気後退は相当長期化するのではないか。

 企業の景況感を示す業況判断指数は、製造業で前回調査(六月)のマイナス一三から同 二四へ大幅に悪化した。全産業ではマイナス一八から同二二への悪化である。製造業の全国平均がマイナス三から同一一への悪化にとどまっているのに比べると、北陸の業況は一段と悪い。

 日銀は、国内企業が過剰設備や雇用を抱えていないことを理由に、調整が深刻化するこ とはないとしているが、そうした見方は楽観的過ぎるだろう。米国では金融危機を思わせる信用不安のまっただ中にあり、実体経済への深刻な影響が懸念されている。欧州も四―六月期がマイナス成長となり、中国など新興国経済も陰りが見え始めている。

 北陸経済は製造業のウエートが高い。主力の一般機械や電子部品などは米国や中国向け の需要が落ち込む一方、原油や原材料価格の高騰による仕入れ価格の上昇で、利幅も薄くなっている。北陸企業の〇八年の売り上げ・収益計画が製造業、非製造業ともに下方修正されているのは、そのせいだろう。

 これまでの景気回復は、輸出頼みだっただけに、輸出にブレーキがかかった反動は大き い。世界経済の不振が北陸経済を直撃する構図であり、設備投資の抑制や雇用の手控えなどは、確実に地域経済の体力を奪っていくだろう。

 政府・与党の総合経済対策は、中小企業の資金繰りや高齢者医療支援など、どちらかと いうと「弱者救済」の色彩が濃い。定額減税についても同様である。景気回復に真正面から取り組むなら、企業への何らかのテコ入れが必要だ。本格的な法人税減税を本気で考える時期ではないか。

◎個室ビデオ店火災 法の網から抜ける危うさ

 個室ビデオ店の利用客が多数死傷した大阪の雑居ビル火災は、風俗営業の実態に法律が 追いつかない現状をあらためて見せつけた。個室ビデオ店などの「個室型店鋪」は業態の分類があいまいなため、適用される法律がはっきりせず、勢い経営者や従業員の防災意識も低いとされる。消防法施行令の改正で今月からようやく自動火災報知器の設置が義務付けられるようになったが、国・自治体は個室型店鋪の実態把握を急ぎ、防災面の監視、指導を強める必要がある。

 放火・殺人容疑で逮捕された無職の男は、「生きていくのが嫌になった」と供述してい るという。犯行は雑居ビル内の個室型店鋪の弱点を突いた形であり、多くの死傷者が出ることを予期していたとすれば、極めて残虐な無差別大量殺人と言わなければならない。被害に遭った人たちは痛ましい限りである。

 個室ビデオ店やインターネットカフェなどの個室型店鋪は、本来のビデオ観賞などだけ でなく、「宿代わり」に使われているのが実態である。料金は大概二千円以下と安く、終電車に乗り遅れたサラリーマンや若者らの利用が多いという。店側も毛布やタオルを貸し出し、軽食も販売するなど宿泊の快適さを競っている。

 しかし、宿泊が主目的ではないため、旅館業法の適用外であり、同法に基づく保健所の 許可は要らない。飲食物も缶やパックで販売すれば、食品衛生法の許可を必要としない。また個室ビデオ店は、成人向けビデオやDVDが多くを占めれば風俗営業法の届け出が必要だが、一般ビデオも見せる場合は届け出なくてもよいという。

 宿泊可能な個室型店鋪は一般的に、構造上、仮眠中の客が火災に気付きにくく、避難も 難しいという問題点が指摘されている。しかも、施設の規模に比べて店員が少ない上、消防関係法令に反する店鋪が多く見受けられる。個室型店鋪は現行法の網から抜け落ち、規制の「死角」になっている状況である。変化する風俗営業の実態に応じて、法律に不備がないか絶えず見直す必要もある。


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