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ハックルベリーに会いに行く このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-10-01

告白してはいけない

男がもし恋愛を成就させたいのだったら、まちがっても告白などはしないことだ。こちらから好きになってもいけない。好きになるのではなく、向こうに好きにならせるのだ。それしかない。選択権は向こうにある。男にできるのは、ただクジャクのように羽を広げ、自分の強さ、逞しさ、美しさを見せつけることだけだ。


例えば、大学の同じサークルに好きな子ができたとしよう。そこまではいい。だけどそこで、一旦その好きになった気持ちを押さえないといけない。もっと言えば捨てないといけない。その上で、もしその女の子ともっと親密な関係になりたいのなら、その子に好きになってもらうよう仕向けることだ。そのための方法はなんでも良い。能力を示すのでも良いし、好きという感情とは別のところで情熱や誠意を見せるのでも良い。とにかく、大切なのはこちらからではなく向こうから好意を持ってもらうこと。そうでないと何も始まらない。恋愛というのはそういうルールになっているのだ。


なぜそうなってるかと言えば、女の子は恋愛にドラマ性を求めるからだ。またゲーム性も求める。だから、同じサークル内で好きになられたりすると、とてもがっかりする。そこにドラマもへったくれもないからだ。また話が合うとか、趣味が合うとか、そういうありきたりな関係から恋愛に発展することを最も嫌う。それではゲームを楽しみようがないからだ。そうではなく、例えば親同士が反目してるとか、最初は大嫌いから始まったとか、知り合った時には相手に彼女がいたとか、親同士が結婚して義理の兄妹だったとか、そういうロマンを求めてやまないのである。それでも、そういう恋愛はなかなか転がっているものではないから、せめて好きになるのは自分からにしたいのだ。自分から好きになって、相手を振り向かせるという、最低限のドラマ性やゲーム性をそこに確保しておきたいのだ。


さらには、プライドの問題もある。女の子は、恋愛については非常に誇り高い。選択権は自分にあると思っているし、男性にも、そういう価値観や、恋愛に対するロマンチシズムを共有してほしいと思っている。だから、それを踏みにじられるような真似をされると頭に来る。同じサークルの、話や趣味の合う男の子から告白などされようものなら、バカにされたように感じてしまう。プライドを傷つけられるのだ。


だから、もし女の子と親密な関係になりたいのなら、彼女のそういうロマンやプライドを尊重しなければならない。相手から好きになってもらうよう努力するのはもちろん、そこにロマンがないのなら、自ら作り出すくらいの気構えがないといけない。障壁がなければ、前もって用意しておくくらいの周到さが必要だ。そうして、相手のプライドをくすぐることだ。相手を尊重して尊重して尊重し尽くすこと。そうして、自分を捨てること。我欲を捨て、最後には、彼女のためなら死んでも良いとさえ思うようになることだ。


こう書くと、「それならもうおれは恋愛などしなくても良い」などと言い出す人がいるが、しかしそれは早計というものだ。そういう人たちは知らないのだ。この全てを捨て去ってクジャクの羽を広げただひたすら相手に好きになってもらうよう努力するということが、いかに恍惚とした体験かというのを。それがいかに楽しく、また面白いかというのを。そこには、生きることの喜びがある。「おれはこのために生まれてきたのではないか」という、これ以上ない充足感がある。クジャクの羽を精一杯広げていると、本当に気持ち良くなってくるのだ。そうして本末転倒するようだが、次第に彼女のことなんかどうでも良くなる。羽を広げることそのものの素晴らしさに気付き、そこで新しい価値観、新しい地平が目の前に開けてくるのだ。


ところが、不思議なことにそういう地点に到達した瞬間に、彼女は自分のことを好きになっているのである。自分はもう、その子よりもっと素晴らしいものの存在に気付いてしまった、その後で。そうして結局、表面的には成就したにも関わらず、その恋もまた実際的には失恋に終わってしまう。男の場合、いかなる経過をたどり、またいかなる結果を得ようとも、恋愛というのは必ず失恋で終わるよう宿命づけられているのだ。


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