ドーム公演までは禁酒しているという沢田研二=門間新弥撮影
歌い続けて40余年。あの「ジュリー」沢田研二が、還暦を迎えた。人生の節目に選んだ大イベントは、東京、大阪でのドーム公演。「人間60年 ジュリー祭り」と題し、集大成のステージを目指す。
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「『待ってました』という感じかな。もう、若い人たちと勝負する必要はないし、好きにやらしてちょうだいね、と言える」。金髪のジュリーは還暦への思いをこう語る。
ミリタリールックに身を包みデビューした「ザ・タイガース」時代。長髪の“元祖王子”は、ソロ転向後もヒット曲を次々放ち、常に芸能界のど真ん中に君臨した。「でも本当は地味な人間なんですよ」
転機になったのは、自ら「調子に乗っていた」と語る70年代半ば。暴行事件を起こして謹慎した。「復帰のときに人と違うことで起死回生を図ろうと考えた。ファンじゃない人も振り返らせたかったから」と明かす。そこで思いついたのが奇抜なメークやファッションだった。「“格好いい”と“気持ち悪い”のすれすれの地点にあえて挑んだ」と笑う。
昨年亡くなった作詞家の阿久悠とは、「勝手にしやがれ」「サムライ」「カサブランカ・ダンディ」など代表作をいくつも残した。詞の世界には、いつも粋で強気な男の姿があった。
「すごい人で尊敬しているけれど、正直言えば僕には合わないと感じていた」。化粧やパフォーマンスは、その違和感を払いのけるためでもあった。作品に立ち向かうのは「すごくエネルギーが必要だった。真剣勝負だからこそ真の意味でのコラボレーションができていたんだと思う」と振り返る。
80年代半ば以降、メディアへの露出は減った。だが、この間も歌いたい曲、聞いてほしい曲を毎年、必ず発表してきた。化粧はやめた。「楽ですよ」と笑うジュリーのいまの歌には、率直な思いがつづられている。