| 【発明の名称】 |
資産運用支援システム |
| 【発明者】 |
【氏名】高橋 大志
【氏名】稲葉 将虎
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| 【要約】 |
【課題】従来、投資の資産配分を決めるのに統合的なツールが存在しなかった。そのため、資産収益率予測、資産配分、リスク分析と言う一連の運用プロセスが運用者の主観的な定性判断により決定される割合が大きく、客観的な評価が困難である。このため、プロセス全体が不透明なものとなっている。
【解決手段】計量モデルまたは相場観に基づく資産収益率予測と計量モデルに基づく共分散推定値を取り込む。計量モデルまたは相場観に基づく資産収益率の1または複数を選択し、計量モデルに基づく共分散推定値を選択し、選択された資産収益率予測値と選択された共分散推定値から選択された最適化方法により最適資産配分を算出する。これは資産配分計算結果のリスク量を計測する分析部で分析しユーザの資産配分結果の評価に供する。最適資産配分の結果は出力して実際の投資に供する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】1又は複数の収益率データと1又は複数の共分散データを入力する入力部と、前記収益率データの1又は複数を選択する選択部と、前記共分散データの1つを選択する選択部と、選択された前記1又は複数の収益率データと前記共分散データから最適な資産配分結果を求める最適化演算部と、求められた資産配分結果を出力する出力部とを備えたことを特徴とする資産運用支援システム。 【請求項2】前記最適化演算部は前記選択された1又は複数の収益率が統合されてなる収益率データと前記共分散データから最適な資産配分結果を求めることを特徴とする請求項1記載の資産運用支援システム。 【請求項3】ベンチマークの資産構成比率に対して求められた逆算収益率を含む1又は複数の収益率データを入力する入力部と、前記収益率データの1又は複数を選択する選択部と、選択された前記1又は複数の収益率データを統合して最終リターンを求める最終リターン演算部と、前記最終リターンと共分散データとから最適な資産配分結果を求める最適化演算部と、求められた資産配分結果を出力する出力部とを備え、前記収益率データは予測値を含み該予測値の表現形式は対ベンチマーク超過収益率で表わされるものを含むことを特徴とする資産運用支援システム。 【請求項4】更に、求められた資産配分結果についてリスク量を求める手段を有し、前記出力部は前記求められたリスク量を出力することを特徴とする請求項1又は請求項3記載の資産運用支援システム。 【請求項5】前記収益率データは過去の資産価格のデータから予測された予測値を含み、更に、前記予測値から運用資産および各資産の予測値を表示しユーザの相場観の入力を誘導する画面を表示する手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項3記載の資産運用支援システム。 【請求項6】前記収益率データの一部として為替の相場観のデータの入力を誘導する画面と株式および/または債券の相場観のデータの入力を誘導する画面とを表示する手段を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項3記載の資産運用支援システム。 【請求項7】1又は複数の収益率データを入力する入力部と、リスク量を指定する手段と、前記収益率データの1又は複数を選択する選択部と、選択された前記1又は複数の収益率データと前記指定されたリスク量を含むデータから最適な資産配分結果を求める最適化演算部と、求められた資産配分結果を出力する出力部とを備えたことを特徴とする資産運用支援システム。 【請求項8】選択された収益率データにベンチマークの構成比率に対する逆算収益率を含み、更に、ベンチマークに対するトラッキングエラーの値を設定する手段を有し、前記最適化演算部は設定されたトラッキングエラーの値をもとに資産配分結果を求めることを特徴とする請求項1又は請求項3記載の資産運用支援システム。 【請求項9】前記収益率データとしてユーザの相場観を取り込む手段を有し、さらに、前記相場観を取り込む手段は投資先の国または資産毎に相対的な収益率の順位を入力せしめる画面を表示する手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項3記載の資産運用支援システム。 【請求項10】前記収益率データとしてユーザの相場観を取り込む手段を有し、さらに、前記相場観を取り込む手段は各資産の期待収益率を表すシナリオを複数用意し、ユーザに各シナリオに重み付けを入力せしめる画面を表示する手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項3記載の資産運用支援システム。 【請求項11】1又は複数の収益率データと1又は複数の共分散データを入力し、前記収益率データの1又は複数を選択し、前記共分散データの1つを選択し、選択された前記1又は複数の収益率データと前記共分散データから最適な資産配分結果を求め、求められた資産配分結果を出力することを特徴とする資産運用支援方法。 【請求項12】逆算収益率を含む1又は複数の収益率データを入力し、前記収益率データの1又は複数を選択し、選択された前記1又は複数の収益率データと共分散データとから最適な資産配分結果を求め、求められた資産配分結果を出力することを特徴とする資産運用支援方法。 【請求項13】過去の資産価格のデータから予測された予測値を含む1又は複数の収益率を入力し、前記予測値を含む前記収益率データの1又は複数を選択し、前記予測値から運用資産および各資産の予測値を表示しユーザの相場観の入力を誘導する画面を表示し、前記ユーザの入力から取り込んだ相場観と選択された前記1又は複数の収益率データと共分散データから最適な資産配分結果を求め、求められた資産配分結果を出力することを特徴とする資産運用支援方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はコンピュータを使用して資産の運用支援を行なう資産運用支援システムに関する。 【0002】 【従来の技術】従来より資産の運用、例えば、顧客から信託された資金、年金などを世界のある国々にキャッシュ(預金)、債券、株式、為替などに適当に分散させて適当な期間投資し、資産からの収益をあげようとすることが行なわれてきている。 【0003】資産の運用プロセスは資産収益率予測、資産の配分、リスク分析と言った一連の過程からなる。ところで、このような過程のそれぞれには、投資理論として諸説研究されており、部分的には客観性を持った計量手法を用いている場合があるが、全体を網羅した一貫性のある運用プロセスはなかった。例えば、収益率とリスクとを勘案したときの最適化については、「ポートフォリオの最適化」竹原均著 朝倉書店発行 (1997.4.20) に説明がある。また、時系列データを統計的に解析する時系列分析については「経済時系列分析」7.予測 廣松 毅、浪花 貞夫著 朝倉書店発行 (1995.9.20)に知られている。証券アナリストジャーナル ページ56−67「相場観を織り込む最適化」豊崎恭行 著 社団法人 日本証券アナリスト協会 発行(1993.12)には相場観と均衡収益率を統合する方法について触れられているが、総合的なプロセスになっておらず相場観の表現が限定的であるなどの特徴がある。また、リスクを推定する計量モデルとしてGARCHモデルが知られている。これは時間変化するリスクのモデル化を示したもので、「バリュー・アット・リスクのすべて」第9章リスクと相関係数の予測 フィリップ・ジョリオン 著 第一勧業銀行金融技術研究チーム 訳 シグマベイスキャピタル発行 (1999.3.25)に説明がしてある。 【0004】しかしながら、実際の資産運用はこれらの理論を意識しながらも個人の定性判断によるところが大きいのが実状であった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】このため、次のような課題が生じている。 【0006】資産収益率予測、資産配分、リスク分析と言う一連の運用プロセスが運用者の主観的な定性判断により決定される割合が大きい。このため、プロセス全体が不透明なものとなっており、客観的な評価が困難である。 【0007】また、各プロセスが定性判断によるところが多いことから、プロセス全体を効率的に把握することが実質上難しくなっており、予測と資産配分(アロケーション)が矛盾する場合が出てくる。。 【0008】更に、定性判断に基づくプロセスで収益率予測を基に資産配分を決定する場合には、資産間の関係、すなわち、資産の収益率とリスクの水準および資産間の相関係数が捉えられにくい。また、複数の予測のシナリオがある場合、更に複雑となってシナリオ間の相関関係など的確に捉え、合理的な方法で資産配分をすることが困難である。 【0009】したがって、本発明の目的は客観性を有する計量モデルに、定性判断を合理的に反映させ、一連のプロセス(予測と資産配分の整合性)が明確な透明性の高いところの、資産収益率予測・資産配分・配分結果のリスク量把握といった資産運用プロセスの遂行を支援するシステムを提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】記憶された収益率を取り込んだりユーザによる収益率予測を誘導して入力させる資産収益率予測入力部と、計量モデルに基づく共分散推定値を取り込む入力部と、計量モデルに基づく資産収益率予測値選択部と、計量モデルに基づく共分散推定値選択部と、選択された資産収益率予測値と選択された共分散推定値から選択された最適化方法により最適資産配分を算出する最適化計算実行部と、資産配分計算結果のリスク量を計測する分析部と、資産配分計算結果を出力して実際の投資に供する出力部を有する。 【0011】 【発明の実施の形態】図1、図2は本発明の一実施例におけるシステム構成図である。図1に示される本体101、図2に示されるデータ取り込み・計量モデル値算出部102は共にPCによって構成され、LAN103によって接続されている。本体101ではユーザが資産運用支援システムを用いて、予測、資産配分、リスク分析の一連のプロセスが行なわれる。一方、データ取り込み・計量モデル値算出部102では上記プロセスで使用されるデータを算出して本体101に入力する。 【0012】本体101は、マウス105、キーボード106などを有する入力装置104、モニタ108、プリンタ109などを有する出力装置107、メモリ111を使いながらプログラムの実行を行なう演算回路110、プログラムとデータをプログラムの実行の際に格納するメモリ111、プログラム113、データ114を格納する記憶部112とを備えている。 【0013】プログラムとしては資産運用支援のためのメインプログラム(支援プログラム)、データとしてはメインプログラムに使用される各種データが記憶される。このデータはデータ取り込み・計量モデル値算出部102から与えられる。各種データについては後述される。 【0014】データ取り込み・計量モデル値算出部102は、マウス115、キーボード116、モニタ117、モデム118などを有する入出力装置121、メモリ123を使いながらプログラムの実行を行なう演算回路122、モデム118からのデータ、プログラム125、データ126を演算回路の処理のために格納するメモリ123、各種プログラム125と各種データ126を記憶する記憶部124とを備えている。 【0015】ここでモデム118は電話回線などの通信回線119によって外部のデータソース120に接続されている。外部のデータソース120からは株価、為替のレート、債券価格など時間と共に変化していく諸量の値が与えられる。なお、ここではPCが機能によって別れている構成例を示したが、同一のPC内で動作するよう構成されていても良い。 【0016】本発明の実施例における各種プログラムやデータなど詳細を説明する前に図3により、本実施例の概要を説明する。図3はプロセスの概要を説明したものである。プロセスとは資産収益率の予測値と共分散値を入力し、収益率の最適化を計算し、資産の配分を決め、リスク量を計算する一連の処理の流れを指す。 【0017】入力としては収益率に関するものと、共分散(リスク)に関するものとがある。収益率に関するものとしては時系列モデルA(時系列データに一定の統計処理を施して抽出された時間的変動法則をモデル化したもの)、クロスセクションモデルB(各資産の将来の期待収益率に関する指標の大小の比較)、逆算収益率(共分散・リスク回避度を示すパラメータ・資産配分比率、例えば、ベンチマークの資産配分から逆算して収益率を求めるもの)、定性判断(個人の調査・経験から求められる収益率)がある。これらから1乃至複数選択可能であり、これらが後で例示する方法等により統合され、そのデータから最終リターン演算が行なわれる。 【0018】一方、共分散の入力としては時系列モデルC、移動平均モデル(ヒストリカル共分散)、指数平滑法、GARCHモデル(時系列モデルの一つでGARCH法で作られたモデル)がある。これらの一つが共分散入力として選択される。 【0019】次に、求められた最終リターンと選択された共分散モデルの1つを用いて最適化演算が行なわれる。最適化演算には既知の手法が利用される。例えば、最大化ないし最小化する目的関数として、絶対リターン−λ*リスク(λは定数)、超過リターン−λ*T.E.(T.E.:トラッキングエラー)、リターン/リスク、リスク等がある。 【0020】こうして、最適化演算を行なった結果として、資産配分結果、すなわちどの程度の資産をどの投資対象に投資すべきかが得られる。次にこの結果についてどの程度のリスクがあるかのリスク量の確認が行われる。以上が概略の処理の流れである。次に、詳細に上記処理について説明する。 【0021】図4は図1の支援プログラムのフローチャートである。始めに条件・予測・共分散入力画面を表示する(401)(入力も行なわれる)。ここでは図13から図16までが表示される。これらは「次へ」または次の処理を選択する「予測値の統合」などというボタンを押すことにより切り替えられる。図13ではリスク回避度、予測値モデルタイプ、予測期間、共分散タイプ、最適化方法が条件として入力される。また、投資パフォーマンス評価の基準となるベンチマークの資産構成比率(合計は1となる)が入力される。ベンチマーク構成比率は投資目的と取り得るリスク量等の情報から妥当と思われるものが作成される。 【0022】図14では、ベンチマークの構成比率からのチルト量の制約を入力している。デフォルトとして下限が−1、上限が1が入力されている。デフォルトと異なる制限を設けようとすれば、例えば、−0.05などが入力される。次に為替エクスポージャーの指定がなされる。ここでは最も一般的なフルオープンが選択されたものとする。為替エクスポージャーとは株式などがある国に投資されているときの為替のリスク量を示したものである。為替の取り扱いは為替ヘッジを行なわないフルオープン以外に為替リスクを調節するため為替ヘッジを可能とする方式、通貨エクスポージャーをユーザが入力する方式等の選択ができる。次に、図15が表示される。これは個人の相場観を入力する画面の初期状態である。ある予測モデルの期待収益率と標準偏差(予測レンジ共分散対角成分)の期待値が入力されている。図16が利用者によって相場観が入力された状態を表している。これは、利用者がキーボードで入力可能である。この例ではデフォルトとして逆算収益率も選択されている。図にも示したように最終リターン(統合リターン)とは選択した予測値および入力した相場観を予測レンジ共分散(自信度)に応じ逆算収益率と統合した値である。最終リターン(統合リターン)は図15の初期入力画面では逆算収益率を反映したものとなり、図16では、逆算収益率と入力した相場観を反映したものとなっている。 【0023】この結果を見て、再度相場観を入力し直したい場合は画面のキャンセルボタンを押して、最初の画面に戻る。これで良いと判断されたなら、画面の資産配分計算実行ボタンが押されそれを入力する(402)。すると、条件・予測・共分散取り込みのサブルーチンへと進む。 【0024】図5はこのサブルーチンを示したものである。先ず、条件として入力された投資期間を取り込む(501)。このとき、投資期間とは図13の予測期間を指す。次に、ベンチマークウェイト、すなわちベンチマークの構成比率を取り込む(502)。次に、図14で入力された制約条件を取り込む(503)。そして、図13で入力したリスク回避度を取り込む(504)。同じく図13で指定した最適化方法を取り込む(505)。 【0025】次に、選択された共分散値を取り込む(506)。図13に共分散タイプの選択画面がありここで選択されたタイプの共分散データが取り込まれる。 【0026】ここで、図2に示した各プログラムについて、説明しておく。過去データ取り込みプログラムは図示していないが、前述した外部データソースからの過去のデータを取り込むプログラムである。時系列モデルA計算実行プログラムを図6に示す。これは時系列モデルを作成するプログラムである。先ず過去データの取り込みを行い(601)、時系列モデルの係数を推定する(602)。推定の方法は種々知られておりここでは例えば最小自乗法によって推定されるものとする。 【0027】次に、推定された係数を用い将来の予測値と予測誤差(予測レンジ共分散)を計算する(603)。その際に、図9、図10で示すリターンファイルと図11、図12に示す行列で表された共分散ファイルを作成する。予測値と予測誤差は同じに計算され、リターンファイルと共分散ファイルが作成される。図9のリターンファイル(過去)は過去4年間の例えば、国毎の短期金利、長期金利や、国毎の債券、株式為替の指数(例えばTOPIX)の状況のデータである。これから図10のリターンファイル(予測)が作られる。予測値にはいくつかの表現形式があり、これらはプログラムのデータとして保有される。 【0028】図7はクロスセクションモデルB計算実行プログラムのフローチャートである。過去データの取り込みを行い(701)、指標の計算を行なう(702)。指標としては各国毎の長短金利差や、株式EPRと債券利回りの差などが挙げられる。このような値から総合的な指標が作成される。そして、予測値と予測誤差を計算し(703)、クロスセクションBのリターンファイルと共分散ファイルを作成する(704)。これらのファイル形式は図9〜図12とほとんど同じであり、値が異なっているものである。但し、予測収益率の代わりに資産の魅力度の順位を用いる場合もある。魅力度の順位は一定のルールに従いリターンに変換されて使用される。 【0029】図8は時系列モデルC計算実行プログラムのフローチャートである。図6での処理と同様に過去データの取り込みを行い(801)、時系列モデルCの係数を推定する(802)。そして、予測値を計算し(803)、時系列モデルCのリターンファイルと共分散ファイルとを作成する(804)。 【0030】ここで、説明を図5のステップ507へ戻す。ここで時系列モデルA選択ありかを図13の画面入力で判定し、選択されていれば図6で求められた予測値を取り込む(508)。図13には予測値のモデルが列挙されておりこれらの1つまたは複数が選択可能である。予測値はリターンファイルとして、予測レンジ共分散は共分散ファイルとして取り込まれる。リターンファイルの例を図9および図10に示す。 【0031】次に、クロスセクションモデルBが選択されたかどうかが判定される(509)。選択されていれば、図示していないが、図10と同様な予測値が取り込まれる(510)。逆算収益率が選択されたかどうかが判定される(511)。選択されていれば、逆算収益率の計算に必要な情報の取り込みを行なう(512)。(逆算収益率の計算方法については別記する。)時系列モデルA、クロスセクションモデルB、ユーザ予測値など前述のように図13において選択される。そして、計算された予測値を読み込む(512)。 ユーザが入力した予測値が選択されているかが判定される(513)。選択されていればユーザが入力した予測値を取り込む(514)。 【0032】以上の処理によって時系列モデルA、クロスセクションモデルB、逆算収益率、ユーザ入力の内、一つまたは複数の予測値から最終リターン算出が実行される(515)。最終リターン算出の手法は別記する。 【0033】最終リターン算出が終わると、図4の最適化計算実行(404)が実施される。これはいくつかある既知の最適化処理方法の中から上記の処理で選択された最適化計算法により最適化計算が実行される。次に、資産配分結果表示をする。これを図17に示す。ここで最適資産配分結果が示される。図のように債券、株式、キャッシュについて、国毎の投資する資産の割合が示される。次に、リスク分析ボタン入力ありかが判定される(406)。これは最適資産配分結果の画面の下部に設けられた「リスク分析」のボタンが押されたかどうかを判定するものである。リスク分析ボタンの入力があると、図18に示す最適資産配分結果(その2)の画面が表示される(407)。ここで、期待リターン、リスクなどが表示される。利用者は図17に表された資産配分結果がどういうリターンをもたらすもので、どの程度のリスクがあるのかの評価結果が判る。利用者がこの結果に満足し、配分結果の印刷の必要がないと判断すれば終了のボタンを押して処理を終了する。それ以外のときは戻りボタンを押す。戻りボタンの入力があるかどうかを判定し(408)、あれば図17の画面に戻る。ここで、利用者は配分結果には満足で、これを印刷したいときは「印刷」のボタンを押す。印刷ボタンの入力があるかどうかが判定され(409)、あれば、資産配分結果の印刷を実行して図17の画面に戻る。利用者が資産配分結果に満足しない場合、また条件や収益率や共分散の情報の選択をやりなおしたい場合には、「再計算」ボタン(入力画面に戻るボタン)を選択出来る。よって、入力画面へ戻る再計算ボタンの入力があるかどうかを判定する(411)。あれば図13の画面に戻り再び最初から上述の処理が実行される。なければ、終了ボタンの入力があるかどうかの判定がなされ(412)、終了ボタンが押されていれば処理は終了する。 【0034】次に、最終リターンの計算方法について説明する。図19は最終リターン計算の部分の処理フローを示す。始めに予測値が選択されているかどうかを判定する(1901)。選択されていなければ最終リターンの計算が出来ないのでエラーメッセージを出して(1902)、処理は終了する。次に、予測値が選択されており、選択された予測に逆算収益率を含むかどうかが判定される(1903)。逆算収益率を含む場合は逆算収益率を算出する(1904)。そして、最終リターンを計算する(1905)。逆算収益率を含まない場合はそのまま最終リターンを計算する(1905)。 【0035】逆算収益率の計算を図20に示す。選択した共分散を取り込む(2001)。そして、先に説明した入力画面の情報から条件を取り込む(2002)。条件にはリスク回避パラメータ、ベンチマークウェイト、最適化方法である目的関数、共分散値を定数倍するパラメータであるccoef(図13において示される)がある。次にこれらを条件に逆算収益率および予測レンジ共分散を計算する(2003)。 【0036】逆算収益率については先にも説明したが、言葉を変えて言えば、資産配分比率、例えば、ベンチマークウェイトと共分散が与えられたとき目的関数の値を最大とする収益率である。(逆算収益率を基に最適化計算を行なうと資産配分比率、例えばベンチマークウェイトが結果としてえられる。)例として以下のような式を示す。但し、目的関数の形は例以外のものも考えられる。 【0037】 【数1】
逆算収益率の予測レンジ共分散は選択された共分散のスカラー倍とする。Σ:選択共分散、ccoef:逆算収益率の予測レンジ共分散の大きさを決定する定数(ユーザ入力)とすると、ccoefΣ:逆算収益率の予測レンジ共分散、となる。 【0038】ccoefの値が小さい場合予測レンジ共分散ccoefΣの各成分の値は小さくなる。レンジが小さくなるのは予測モデルの推定誤差が小さくなることに対応している。従って、選択した予測に逆算収益率を含む場合で、逆算収益率の予測レンジ共分散の値が小さい場合は、最適化の結果がベンチマークから極端にずれることはない。 【0039】次に最終リターンの算出について説明する。図21にその処理フローを示す。始めに、選択予測の予測値、予測レンジ共分散、予測値表現形式を取り込む。これが計算可能条件を満たしているかどうかを判定し(2102)、満たしていない場合はエラーメッセージを出して(2103)、処理を終わる。満たしていれば最終リターンを算出する(2104)。各項目の詳細については以下に述べる。 【0040】最終リターンの計算可能条件を満たしているかどうかは次の条件が存在することである。 【0041】 【数2】
通常のケースでは対象となる資産総てについてのリターンを有するモデル、例えば、逆算収益率や時系列モデルAなど、を選択すれば最終リターンは算出可能となる。 【0042】図22に最終リターンの計算の例を示す。図示のように期待収益率と予測レンジ共分散と予測値表現形式が求まれば図示した式によって最終リターンを求めることが出来る。 【0043】図23に予測レンジ共分散の例を示す。例1のようにマトリックスの総てに数値(対角要素は正の数値)が格納されているものの場合や、例2に示すように対角要素のみ正の数値が格納され、他の要素は0である場合などがある。通常、逆算収益率の予測レンジ共分散は例1のタイプ、図16において入力するユーザ予測の予測レンジ共分散は例2のタイプとなる。 【0044】図24に予測値の表現形式について示す。表現形式には(1)絶対収益率、(2)2資産相対収益率(例えば、2国間での相対的な値)、(3)対ベンチマーク超過収益率がある。絶対収益率は知られたオーソドックスな形式であるが、特に(3)の対ベンチマーク収益率は本発明の実施例において特徴的なものの一つである。これらはそれぞれ図24の行列の形式で表すことが出来る。これは絶対リターンを基準としどんなベクトルをかければ良いのかを示す。予測モデルが絶対リターンで算出するものであっても前記の行列をかける事により対ベンチマーク収益率に変換することが可能である。従って、これを資産配分の計算の入力とすることが出来る。また、最初から予測値を対ベンチマーク超過収益率にて与えることも可能である。相場観の入力方法にも上記の絶対収益率、2資産相対収益率、対ベンチマーク超過収益率の3種類の入力方法がある。 【0045】ここで、対ベンチマーク収益率を使用した場合の効果について説明する。選択した予測値に逆算収益率を含み、且つ予測レンジ共分散行列の数値が小さい、そして逆算収益率以外の予測についても選択されているとする。このとき、予測値を絶対リターンで与える場合と相対リターンで与える場合とも逆算収益率の水準等により資産のアロケーションがユーザの意図と異なる場合があると言う問題がある。ユーザの意図とは、ベンチマークの期待収益率に対し高い期待収益率を有する資産の配分のウェイトは高くし、逆に低い期待収益率を有する資産の配分ウェイトは小さくなるアロケーションである。 【0046】逆算収益率はリスク回避度によりその水準が変化する。そのため、予測値を絶対リターンで与える場合も相対リターンで与える場合でも同じ相場観を与えた場合に逆算収益率の水準との相対関係によりチルト量の方向が異なる場合があるという特性がある。 【0047】これに対してベンチマークに対しての予測値を入れた場合はユーザが意図するチルトの方向と算出されたチルト方向に違いが出にくいという利点がある。 【0048】次に図25以下を用いて本発明の他の実施例を説明する。これらは上記した実施例に機能を付加したものであるため、付加した部分のみについて説明する。図25は資産配分計算条件入力画面において、トラッキングエラー(T.E.)をユーザが入力時に指定できることを示している。T.E.は資産配分比率のベンチマークウェイトからの乖離度と共分散(資産毎に価格変動率が異なり、資産間の相関も異なるため共分散も考慮しなければならない)を考慮して求められるものである。これは配分を決めるときリターンとリスクを勘案して決められるのであるが、リスクを固定値として与えるというものである。顧客によってはある程度大きいリスクをとっても良いという人と、リスクはあまり取りたくないという人がいる。これに適合して、リスクを固定した上でリターンが大きくなるような配分を求める。ある一定のリスクを指定することによって、狙ったリスク水準を持つ配分の値が得られる。 【0049】更に、図25ではユーロ制約を指定できる。これは、ユーロ通貨圏内の諸国に対して投資を増やす場合、又は減らす場合ベンチマークでの諸国への投資割合に比例させるかどうかの指定である。“0”を入力した場合は制約なく資産配分を行なうし、“1”を入力した場合はユーロ通貨圏内は等比率で投資の増減を行なう。ユーロ通貨圏を一塊に考えることができるため条件の設定が容易になる。 【0050】図26は株式の相場観入力画面で複数の相場観を入力できることを示している。国毎に絶対的数値を入れることなく、相対的な収益率の良い予想順位を入力することを可能としている。この順位にはコンピュータにより中立順位との差に資産の標準偏差と定数をかけたものに逆算収益率を足したものをリターン値とするという計算が行なわれる。これによって絶対的な数値を入れる必要がなく資産配分が行なわれる。なお、中立順位はデフォルトで中央の順位が設定されているがユーザが別の値を入力することも可能である。 【0051】図27は為替の相場観の入力画面を示す。これは図26とは為替の入力であることが異なっている。ここで、注目されることは外国株式の相場観を入力するとき株式と為替を分けてそれぞれについて相場観を入力していることである。このように分けて考えることにより、為替と株式を合わせて相場観を入力するより予想がし易いという利点がある。為替の変化率と各資産の現地通貨ベースの収益率は、別々の動きをするものであり、それらは通常一致しないからである。 【0052】図28は資産配分の計算結果を示したものである。即ち、図25から図27の入力の結果を示している。これは、図25でトラッキングエラー値を指定しない場合である。チルト量とは先にも述べたようにベンチマーク構成比率からの乖離量である。これから相場観の善し悪しを判断する。これで良いと判断すればこの結果に基づき資産の配分を行なう。必要であれば印刷をクリックして結果をプリントアウトする。場合によっては、元に戻って再計算をする。 【0053】図29は図25でトラッキングエラーを指定した場合を示している。この例ではトラッキングエラーを2.00%に指定してある。図28に比べるとチルト量が大きくなっている。顧客がリスクが高くともリターンを大きく取りたいとか又その逆の意図を持つ場合があるので、指定したトラッキングエラーの水準に見合った資産配分が得られるのは有用である。 【0054】図30は図25でユーロ通貨圏では投資の増又は減を比例と指定した場合の最適資産配分結果を示す。このときの最適資産配分とベンチマークの構成比率の値およびチルト量が表示される。図28、図29の結果と同様にこの値で投資をするかまたは再計算をするか等の選択が出来る。 【0055】図31は図28、図29、図30の結果の画面でチルトグラフが指定されたときの各画面でのチルト量をグラフ化し感覚的に判断出来るようにしたものである。戻るをクリックすれば元の結果表示画面に戻る。 【0056】図32は図28、図29、図30でリスク分解を指定したときに表示される画面を示している。これは前述のリスクの指定の有無に係わらず表示される。この画面はリスクの内訳を示したものであり、ユーザによる資産配分結果の評価に利用される。資産毎にリスクの値が示されている。これでユーザは結果の良し悪しや極端な値が出ていないか等が判断される。戻るをクリックすれば元の結果表示画面に戻る。 【0057】図33は相場観の入れ方の他の実施例を示したものであり、各資産に対応するシナリオを示す。これは債券の投資に使われるものである。債券には満期までの期間が長いものから短いものがあり、それをここで反映している。例えばここでの資産名とはAが1年債、Bが2年債、Cが3年債などの債券の満期までの年限により区分けした債券の集合に相当する。シナリオとは各年限の債券の期待収益率の組み合わせを示したものである。横軸に期間を縦軸に金利をとったグラフ曲線をイールドカーブと呼ぶ。将来のイールドカーブの形状が予測出来れば各年限の期待収益率は算出できる。このイールドカーブの予測形状により各シナリオを作成することが出来る。 【0058】それぞれのシナリオには重み付けがなされている。重み付けとはその事象が起こる主観的な確率に相当する。重み付けはユーザの相場観に基づいたものが入力される。このような相場観の入力の方法は債券の投資において、1つのシナリオだけに依存しない年限配分が得られるという効果がある。 【0059】なお、以上はLANで接続された複数のPC、又は単独のPCで実現されるものとして説明したものであるが、実現方法はこれに限られるものではない。例えばインタネットのWebサーバ上で実現し、クライアント端末に対して情報サービスを行なう形式であっても良い。 【0060】以上述べた実施例において次のような効果がある。資産配分を求めるのに必要なデータを入力することから求めた資産配分結果を出力するまでの統合的な資産運用の支援システムが提供出来た。このため個人の定性判断に余り依存することなく適切な資産の配分結果が得られる。更に、資産配分結果を得るための統合的なコンピュータを利用したシステムが出来たことにより、これによって容易に資産配分の試行が可能になり、利用者にとってより良い資産配分の結果を求めることの出来るツールが提供出来た。本支援システムを利用すれば計量分析やコンピュータに高度の知識を持たない者でも資産配分の計算が可能となる。また、資産のリスクを反映して算出された逆算収益率を最終リターンを求める収益率の入力選択候補の一部とすることにより適切な予測の入力、資産配分計算を支援することが出来る。更に、その逆算収益率をベンチマークに対するものとしたものを最終リターンを求める収益率の入力の一部とすることによりチルト量の少ない資産配分結果が得られる。また、予測値の表現形式を対ベンチマーク収益率で表すことによって、ユーザの意図する適切な資産配分結果が得られる。更に、他の実施例で述べたようにリスク量を予め与えて、そのリスク水準になるリターンが得られる資産配分結果を求めることにより本システムのユーザまたは顧客がどれだけのリスクを取るかという狙いに合った資産配分結果を得ることが出来る。また、国毎の収益率を入力するとき絶対的な数値を入力する必要がなく相対的な収益率が良いと考える順番を入力するだけでも良いので相場観の入力が容易である。更に、株式と為替を分けて別々に相場観を入力することが出来るのでより正確な相場観の入力が可能となる。また、相場観の別の入力方法として債券の予測変動のシナリオを用意しその重み付けを入力するようにしたので相場観の入力が容易になると共に1つのシナリオに依存しない資産配分が期待出来る。 【0061】 【発明の効果】本発明によれば、資産配分を求めるのに必要なデータを入力することから求めた資産配分結果を出力するまでの統合的な資産運用の支援システムが提供出来た。このため個人の定性判断に余り依存することなく適切な資産の配分結果が得られる。更に、資産配分結果を得るための統合的なコンピュータを利用したシステムが出来たことにより、容易に資産配分の試行が可能になり、利用者にとってより良い資産配分の結果を求めることの出来るツールが提供出来た。
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| 【出願人】 |
【識別番号】597134256 【氏名又は名称】中央三井信託銀行株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年11月15日(2000.11.15) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100068504 【弁理士】 【氏名又は名称】小川 勝男 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−149964(P2002−149964A) |
| 【公開日】 |
平成14年5月24日(2002.5.24) |
| 【出願番号】 |
特願2000−347828(P2000−347828) |
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