総務省が30日公表した、07年度決算に基づく自治体財政の健全化を判断する指標の一つ「連結実質赤字比率」(速報値)で、道内では5市町が基準を超えた。
共通するのは公立病院・診療所の経営悪化だ。加えて医師が次々といなくなり、十分な診療体制が取れなくなっている。膨らむ赤字と先細る地域医療を前に、自治体からは悲鳴が上がっている。
連結実質赤字比率で破綻(はたん)状態と判断される財政再生基準を超えたのは夕張市と赤平市。イエローカードの早期健全化基準は留萌市、後志管内積丹町、美唄市が超えた。
赤字比率ワースト3位(36・61%)の留萌市は、連結実質赤字の約9割を占める市立病院の累積赤字(約27億4000万円)が重くのしかかる。常勤医師が04年度の31人からくしの歯が欠けるように減り続け、今は24人になった。民間並みの給与を支給できないため新たな医師も集まらず、脳神経外科は休止に追い込まれ、平日午後の外来受け付けも中止した。
留萌管内唯一の総合病院。年間約1300人の救急車搬送のうち、約半数は留萌市以外からだ。笹川裕院長は「このまま縮小が続けば、留萌圏域の地域医療は機能不全に陥る。命を守る体制に地域格差を生んではならない」と病院維持の重要性を強調する。市財務課は「市民の安心を守るために病院は維持したいが、やりくりは厳しい」と嘆く。
町立診療所が6億1600万円の累積赤字を抱える積丹町は06年4月から入院を廃止し、赤字額を年々圧縮。08年度決算では早期健全化ラインを下回る見込みだ。
しかし、企画課は「冬の除雪費が想定よりかかったら、再び早期健全化ラインを超えかねない」と危機感を強める。
また5市町以外でも、根室管内羅臼町や空知管内由仁町などのように病院事業の特別会計で多額の赤字を抱えている自治体も少なくない。命を守る病院が財政を圧迫している事態に、各自治体は「病院は地域に必要なインフラ」として国の支援を求めている。【鈴木勝一、横田愛】
毎日新聞 2008年10月1日 北海道朝刊