「TOKYU」といえば「東急」。他社の営業使用は混同するから認められない――。東京急行電鉄(東京都渋谷区)がこう主張して、宮城県石巻市の建設会社「藤久(とうきゅう)建設」に英語表記の使用の差し止めを求めた訴訟の判決で、東京地裁は30日、東急側の請求を棄却した。
大鷹一郎裁判長は、広辞苑をひもといて、「とうきゅう」と同じ読みに「冬宮(ロシアの宮殿)」「等級」「投球」などがあると列挙。さらに、大分市には「東九興産」があり、盛岡市には「とうきゅう商事」がある――などと指摘して、「『とうきゅう』という呼び方で思い起こされるのは『東急』だけ」という東急側の主張を退けた。
資本金約1200億円の大企業から突然、訴えを起こされた「藤久」の社員は「うちは石巻周辺でしかやってない、10人ぐらいしかいない会社。東急と競合関係もないのに、相手は何を考えているのか……」と困惑。「TOKYU」の表記はメールアドレスなどに使っているが、訴訟では「東急グループの企業と勘違いされたことはないし、間違いメールを受けたこともない」と反論していた。
一方の東急は、「判決文を見ていないので、コメントできない」としている。(河原田慎一)