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こんにゃくゼリーを「安全」にするいくつかの方法についての提案

手短に。子どもがこんにゃくゼリーをのどに詰まらせる事故がまた発生した(参考1参考2)。事故が続くさまは痛ましい限りで、ご冥福をお祈りするしかない。

個人的には、これだけ事故があるのにどうして小さい子どもに与えたりするのだろうという思いを禁じえないのだが、人間誰しも魔が差すときはあるから、ついうっかりという場合はありうる。大人でいまだに知らない人がいるとは正直思えないが、世の中もののわかった人ばかりではないということもあるかもしれない。はっきり書いてある警告マークを読まない不注意や安全に配慮しない怠慢・無知が直接の原因であるとしても、フールプルーフという考え方もある。さしたる支障なく対策が可能であるなら、できることはすべきだ。

で、いくつか考えてみる。当該領域にはまったくの素人なので、単なる思考実験レベルであり、実現可能である保証はないのだが。

食べ物をのどに詰まらせる事故という観点からは、こんにゃくゼリーより餅のほうがはるかに危険ではないかという声がある(実際、死者の数も多いはずだ。参考3参考4)。また、急性アルコール中毒による死者のほうが多いのではないかという声もあろう。道理だと思う。とはいえ、餅が食べ方によっては危険だという事実は少なくとも日本では古くから広く知れ渡っているから、「知らないほうが悪い」という理屈はこんにゃくゼリーに比べてはるかに通りやすい。アルコールの場合も、判断力に乏しい小さな子どもが大量に口にすることはあまりなかろう。比較的新しい食べ物であること、子どもが好みそうな食品であることなどから、こんにゃくゼリーにはそれなりの対策をとっておくべきという考え方には、一定の説得力がある。もちろんメーカーがいろいろ対策をとっているのは知っているが、さらに対策をとるとすれば何だろうかを考えてみるわけだ。

ただ、死亡事故が相次いでいるから販売を禁止すべきであるというのも短絡的だと思う。報道によれば、EUや韓国では事故が相次いだために販売禁止になったそうだが、こんにゃくそのものに関する知識のレベルが、少なくともEU諸国に比べて日本の場合ははるかに高いはずだ(韓国ではこんにゃくを食用とするそうだが、少なくともこんにゃくゼリーについての知識は日本より少なかろう)。こんにゃくゼリーはすでに日本に定着した商品であって、多くの消費者が何の問題もなく食べている。なんでも禁止するのが消費者保護になるなんていう考えはいかがなものか。製品自体にさらなる工夫の余地があるなら、そちらをまず行うのがスジかと思う。

問題は、こんにゃくゼリーがゼリーに似ていながら実際にはちがうという点にある。外見やゼリーのようであり、つるんと食べられるにもかかわらず、ゼリーより硬く、弾力性が高いため、のどにつまりやすくなるわけだ。また、味覚の点では子どもが好みやすいものになっており、子どものおやつとして与えやすい大きさであるため、いくら警告メッセージを書いてあっても不注意な大人が与えてしまったり、子どもが自分で食べてしまったりする。

以上をふまえて、いくつか。一番簡単に考えれば「ふつうのゼリーのようにやわらかくする」というのが根本的な解決法かと思う(一般的なゼリーをのどに詰まらせる事故はあまり聞かないので)が、それはできないという前提で。警告メッセージや広報を強化するという案も、見ない人がいるからそれだけでは不足だという前提で。

(1)小さくする
こんにゃくゼリーがのどに詰まるのは、端的にいえば、噛まない状態のこんにゃくゼリーがのどの直径より大きいからだろう。弾力があるから途中までは入るが、途中で詰まるわけだ。だとすれば、のどに詰まりようがないくらい小さくすれば、問題の大半は防げるのではないか。タピオカでよくあるようなやつ。直径2~3mmぐらいの球形に加工することはできないものだろうか。くっついちゃうなら液体の中に浮かせる手もあろう。プリンくらいの大きさの容器に液体とともに入れて、スプーンですくって食べるようにしてはどうか。いっそ「つぶ入りドリンク」にする手もあるかもしれない。

(2)大きくする
逆に大きくするという考え方もある。ぜったいにひと口では入らない大きさにすれば、なんらかの方法で切って食べるしかない。(1)と同じようにプリンのような容器を使って、そこにプリンと同じように入れれば、人はスプーンですくって食べたくなるのではないか。そういう「フレーミング」の問題ってけっこうばかにならないと思う。硬くてスプーンで食べるのは難しいだろうか。ならば、あらかじめある程度の切れ目を入れておくという方法もある。または、こんにゃくゼリーを無味なものとして、そこにソースのようなものをかけて食べるようにするのはどうか。典型的なコーヒーゼリーを思い浮かべていただければいい。あれはぐちゃぐちゃに崩して食べないと、味がいきわたらない。幼児なら、周囲の大人がやってあげることになる可能性が高いはず。

(3)硬くする
せんべいを丸呑みしようとする人はいない。理由は簡単で、硬いからだ。その意味でいえば、こんにゃくゼリーの場合は、中途半端に硬いのが問題ということになるのだろう。思い切ってもっと硬くできないものか。せんべいのようにするのは難しいかもしれないが、たとえばグミ(特に外国のやつ。これでもかと思うくらい硬いのがある)のようになっていれば、噛んで食べようと思うはずだ。それに、考えてみれば、こんにゃくそのものを丸呑みする人もあまり聞かない。硬さや大きさという点もさることながら、表面が比較的ざらざらしているという点も大きいだろう。こんにゃくのように表面をざらざらしたものにはできないのだろうか。

(4)子どもには開けられないパッケージにする
子どもが勝手に食べてしまう事故というのは、幼児ぐらいであれば充分にありうる。具体的にはどんなものか素人なのでわからないが、子どもには簡単に開けられないパッケージングは検討に値すると思う。缶詰とかにすればほぼ大丈夫だろうが、いかにもコストがかかる。一般的なポリプロピレン容器でも、これでもかと思うくらい開けにくくて苦労するものがあるから、はさみでないと開けられないようなものにすれば、少なくとも勝手に刃物をいじらせない程度の年齢の幼児の手からは遠ざけることができるのではないか。

(5)苦くする
こんにゃくゼリーはダイエット食品として広く消費されている。考えてみればダイエットというのは、ふつうの子どもにはあまり必要のないものなわけで、だとすれば、小さい子どもは好まないが大人は好むような味付けにすれば、子どもに与えようなどとは思わないだろうし、子どもも食べたがらないだろう。たとえばビール味、コーヒー(ブラック)味などにしてみてはどうか。そもそも買う段階で「これは子ども向けではない」という意識になるだろうし。ダイエット目的ならいっそ唐辛子入りの激辛にする手もある。

(6)味を中に閉じ込める
表面には味がついていなくて、内部にだけ味がついているようにすれば、噛んで食べるようになるだろう。表面を硬くしておけば効果が増すはずだ。1回噛むだけで中身が流れ出てくるのではなく、よく噛まないと味が出てこないようにできればなおいい。要するに「つるんと飲み込むものではない」と思わせればいいわけだ。

しつこいようだが以上は素人考え。もともと現在の商品は、メーカーの方々がいろいろ工夫を重ねた結果ああなっているはず。こんなことはとうに検討の上却下済みなのかもしれない。しかしこんにゃくの専門家の皆さんであればもっといいアイデアがあるだろう。不幸な事故が続かないために、ぜひご検討を。

消費者行政の専門家の皆さんは、消費者を赤ちゃん扱いするのが消費者行政ではないということをお忘れなきよう。本物の赤ちゃんは成長していくが、大人を赤ちゃん扱いしていると成長どころかむしろ退化していってしまう。これは食品偽装や毒物混入などとちがって、素人にも簡単に判断のできる問題のはずだ。この問題の本質はメーカー対消費者ではなく、愛好者対禁止論者という消費者同士の対立の構図にあるのだと思う。どちらか一方だけに犠牲を強いるのは好ましくない。

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Comments

(2)の「大きくする」ですが、そうすると大きなスプーンで口に入りきらないくらいのをすくって無理やり押し込んでのどにつまらせる可能性があるのでダメだそうです(早食いで給食のパンを押し込んで亡くなられた中学生がいましたので、むべなるかなと思います)

(4)ですが、そうすると大人が自らあけて与えるようになるので、これも無意味でしょうか。

Posted by: マグナカルタ | October 01, 2008 at 10:12 AM

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