福岡県警は14日、同県八女市で10日に起きた乗用車強奪事件で、日系ブラジル人の元建設作業員、モリヤ・バァルデシー・タモツ容疑者(40)=福岡県広川町=を強盗致傷容疑で逮捕した。2度にわたって警察を振り切り、逃走距離は100キロ以上に及んだが、大分県別府市の百貨店「トキハ別府店」をうろついていたところを大分県警の警察官に見つかり、身柄を確保された。
調べでは、モリヤ容疑者は10日午後4時半ごろ、八女市上陽町で男性(83)の乗用車(時価約80万円)を奪って逃走、その際に男性と男性の妻(78)に軽傷を負わせた疑い。
11日未明には福岡県朝倉市で警察に見つかり、車を乗り捨てて逃走。鉄パイプを束ねた手製拳銃のようなもの2丁とサバイバルナイフが車内で見つかった。更に、軽トラックを盗んで朝倉市を離れ、同日午後6時半ごろ、大分県日田市でパトカーに見つかると、今度は車を乗り捨てて裸足で逃走していた。
14日午後、モリヤ容疑者が別府市内にいることが判明し、大分県警捜査1課などが同3時ごろ、同店屋上のフットサル場近くのベンチに座っていたモリヤ容疑者を発見。声をかけたところ、素直に聴取に応じたという。靴は履いていた。
福岡県警の調べでは、モリヤ容疑者は97年に来日。建設作業員だったが今月上旬、自己退職。「筑後地区に住む元同僚の男性宅に押しかけ復讐(ふくしゅう)するため、車を奪った」と容疑を認め、大分県日田市から別府市までは「盗んだ車で移動した」と供述しているという。逮捕時の所持金は数千円だった。モリヤ容疑者は9日、家族に「県外の職場(建設現場)に戻る」と話して家を出たという。朝倉市内に残された乗用車内の遺留品から、モリヤ容疑者が浮上していた。
トキハ別府店のフットサル場に試合で来ていた大分市皆春の渡辺駿太郎さん(18)は「(容疑者は)フットサル場と(観覧用の)テラスを階段で何度も行き来しながら試合を見ていた。ズボンの後ろを警察官につかまれ、連れて行かれた」と話した。モリヤ容疑者はぐったりとして元気がなかったといい、「まさかあの事件の容疑者とは思わなかった」と驚いた様子だった。
逃走現場の日田市では住民が恐怖と不安に陥っていたが、防災無線を使って、身柄確保が知らされた。【金秀蓮、松尾雅也】
毎日新聞 2008年9月15日 1時31分(最終更新 9月15日 1時41分)