島根県公式ウェブサイト(トップに戻る)

ここから本文

トップ > 農業技術センター > 技術情報 > 土壌肥料対策指針 > 3.土づくり用資材の特徴と施用法 3)土壌改良資材

3.土づくり用資材の特徴と施用法


 3)土壌改良資材

 ここでいう土壌改良資材とは、地力増進法で指定されているものを指し、直接養分とはならず主として土壌の物理性および化学性の改良に役立つ(一部養分を含むものもある)資材をいう。
 これらの資材は外観から品質を識別することが困難であり、地力の増進を図る上で品質が特に重要な資材であるため政令で指定され、原料、用途、施用方法等の表示が義務づけられている。資材の購入、使用に当たって表示内容をよく確認することが重要である。現在12種類が指定されており、その品質基準や主な用途は第10表に示したとおりである。

 
  第10表 政令指定土壌改良資材の品質基準、主な用途、注意点

  表10

 

 (1)泥炭
 湖沼や低湿地に生育したヨシやミズゴケ等の植物遺体が、低温や貧酸素状態といった分解が進みにくい条件下で堆積したものである。有機物中の腐植酸の含有率が70%未満のものは土壌の膨軟化や保水性の改善効果が、また、有機物中の腐植酸の含有率が70%以上のものは保肥力の改善に効果が期待できる。泥炭を洗浄し乾燥、切断、ふるい分けしたものがピートモスである。中和してなくpHが低いものは石灰と併用する。育苗床土や鉢土には容積で20〜30%くらいを混ぜて使う。

 

 (2)バークたい肥
 樹皮を主原料とし、家畜ふん等の窒素源を加え堆積、腐熟させたもの。新鮮なバークにはフェノール等の有害物質が含まれており植物に生育阻害を引き起こすが、堆肥化が進むと微生物によって分解され不活化する。バークは微生物分解を受けにくいので耐久性が高く、土壌の透水性や通気性等といった物理性改良効果が長続きする。また、多孔質であり保水性が高いが、乾きすぎると撥水しやすくなるので水分管理に注意を要す。表7に示したように品質の良いものはCECが70〜80me/100g以上あり保肥力が高い。なお、バーク堆肥は他の堆肥類と同様に肥料取締法における特殊肥料でもある。

 

 (3)腐植酸質資材
 石炭又は亜炭を硝酸又は硝酸及び硫酸で分解し、カルシウム化合物又はマグネシウム化合物で中和したもの。このうちマグネシウム化合物で中和したものは肥料取締法で公定規格の定められた腐植酸苦土肥料である。類似の肥料に腐植酸アンモニア肥料、腐植酸りん肥、腐植酸カリ肥料があるが、これらは政令指定の腐植酸資材には含まれない。

 腐植酸の主な効果は保肥力の向上であるが、この他にも銅や亜鉛、鉄、マンガン等と結合することで、これらの微量要素が作物の吸収しにくい形態に変化するのを防ぐ働きや、土壌のリン酸固定を抑制する効果のあることが知られている。しかし、堆肥のように土壌の物理性を改善したり、養分供給力や微生物活性を高めるような効果はない。価格の面から施用量は50〜100kg/10a程度に制限されるので、効果が上がりやすいように全面施用ではなく根圏等への局所施用や施設栽培等での利用が中心となる。

 

 (4)木炭
 木材、ヤシガラ等を炭化したものであり樹種や炭化法による政令指定上の制限はない。炭化温度が高いほど相対的にミネラル分の割合が高くなりpHも高い。最近は竹林面積の増加対策として竹炭の生産量が増加している。木炭の主な効果は土壌の透水性改善であるが、砂質土壌では保水性の向上にも効果が期待できる。他に、カリウム等の供給源や、無数に存在する微細孔隙がVA菌根菌等の有用微生物の住みかになるといわれている。また、中山間地域研究センターの試験結果をみると、10cmの深さに作条施用しその上にセル苗を移植したホウレンソウでは11連作しても障害が発生していない。これらの報告での施用量は、10a当たり作条施用で40〜100kg、全層では100〜1000kgと様々である。 

 

 (5)けいそう土焼成粒
 けいそう土を造粒して1000℃以上の高温で焼成した多孔質セラミック粒子である。土壌改良に使用される資材の粒径は2mmぐらいのものが多い。ケイ酸(約75%)、アルミニウム(約13%)、鉄(約5%)が主成分であるが、化学的に安定した物質でありほとんど溶解しないのでリン酸吸収係数は小さく、pHは中性付近にある。1L当たりの重量は550g前後、孔隙率は約75%であり、土壌の透水性の他に保水性や通気性の改善効果が期待できる。主に各種植栽基盤土、鉢やプランターの用土等に容積割合で10〜20%を混合して使用される。

 

 (6)ゼオライト
 沸石類と呼ばれるアルミノケイ酸塩鉱物の総称であり、島根県は西日本最大の産出県である。土壌改良を始め水質浄化やガス吸着、触媒の担体など多分野で活用されている。
 土壌改良に使用される資材は、ゼオライトを含む凝灰岩を粉砕、乾燥した後に篩分けしたもので、粒径の異なる数種類の製品が販売されている。
 ゼオライトは微細孔隙に富み陽イオン交換容量(CEC)が極めて高く交換性イオン含量も多い。従って砂質土壌などに施用すると土壌の保肥力が増加し、併せて共存するカリウムやカルシウムなどの肥料効果も期待できる(第11表)。
 堆肥と併用すると、堆肥に含まれるアンモニアがゼオライトの孔隙に吸着され、畑作物が吸収しやすい硝酸態窒素に少しずつ変化する。このため窒素が流失しにくく粗粒質で肥沃土の低い土壌の短期熟畑化に特に大きな効果がある。

 

  ゼオライト 

 

 一方、塩類が集積しECの高い施設土壌での施用例をみると、ゼオライトを施用してもECの低減効果は小さいが、アンモニアやカリウム等の陽イオンの利用率は向上する。
 水田での施用試験も多く行われており、湿田より乾田(漏水田)での増収効果が大きい。ゼオライトは20〜30mg/100gの可給態ケイ酸(たん水保温静置法SiO2)を含有するので、ケイ酸質肥料としての効果も期待できる。
 ゼオライトの主な効果は保肥力(CEC)の向上によるものなので、施用量の決定に当たってはこの点からの検討が必要である。例えばCECが100me/100g(以下meの数値のみ表記)のゼオライトを10aのほ場全面、10cmの深さに1t混合すると、土壌のCECは計算上1me増加することになり、ほ場のCECの現状と改良目標の差が3meなら比例計算によって3tのゼオライトが必要である。このようにCECを高めるためにはある程度まとまった量が必要であるが、コストや労力を考えると一括施用が難しい場合が多い。ゼオライトはベントナイトとは異なり膨潤、崩壊性がないので効果は持続し連用による分施が可能である。また、園芸作物では畝や根域等の局所に集中施用する方法も合理的である。分施の施用量は200〜400kg/10aを目安とし、局所施用する場合は面積から比例計算で求める。育苗床土には重量比で10〜20%、鉢などの用土では5〜15%のゼオライトを混合施用する。
 この他、ゼオライトは家畜ふん堆肥やぼかし肥料の製造にも利用できる。粒状ゼオライトは通気性を高めるので好気発酵を促進し腐熟化を促進する。また前述したようにアンモニアを吸着するので揮散による損失と悪臭の発生を和らげる効果がある。ゼオライト施用量の目安は、堆肥で原材料の10〜20%、ぼかし肥料では山土の20〜30%程度である。

 

 (7)バーミキュライト
 雲母系鉱物を600〜1000℃で焼成したもので、比重が軽く孔隙率が90%以上であるため透水性の改善に効果が高い。一方、重量の6倍ほどの吸水力があり保水性の向上効果も期待できる。CECは20me/100g前後であり一般的な土壌と変わらないが、微細孔隙は水分や養分を物理的に保持するためCECと同様の効果があり、養分の流出が少なく緩効的に働く。また、高温で焼くため無菌に近く、微生物資材などの担体として利用されることもある。主に育苗や鉢用など園芸用土として、土壌1に対して0.2〜1の割合で混合利用されることが多い。

 

 (8)パーライト
 マグマが急速に冷やされて生成した火山ガラスを主成分とする真珠岩類を800〜1200℃焼成した多孔質粒子である。pF1.5(ほ場揚水量)〜4.2(永久しおれ点)の有効水分率は、粒径によって異なるものの40〜60%であり保水性が大きい。この他、通気性や透水性が大きいため粘質土の改良に効果がある。園芸培土や緑化工事に使われることが多いが、果樹園で溝や植穴施用されることもある。経済的理由から一般的な施用量は容量比で土壌の10〜20%である。

 

 (9)ベントナイト
 白ないしクリーム色の粘土であり、水中では速やかに吸水し膨潤し、さらに多量に吸水すると崩壊し粘り気の強い懸濁状態となる。この性質を活かして主に砂礫質水田の漏水防止に使用される。また、CECが50〜100me/100gと高いので保肥力の向上効果がある。しかし、これに関しては特に火山灰土壌で年数の経過とともに効果に低下傾向が認められるので、3〜5年をめどに再施用する必要がある。

 

 (10)ポリエチレンイミン系資材
 アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体である。土壌の団粒形成促進を介して土壌の通気性、透水性、保水性を改善する。

 

 (11)ポリビニルアルコール系資材
 ポリ酢酸ビニルの一部をけん化した高分子系の土壌改良材である。ポリエチレンイミン系資材と同様に、土壌の団粒形成促進を介して土壌の通気性、透水性、保水性を改善する。

 

 (12)VA菌根菌資材
 一部の植物の根に共生する糸状菌(カビ)の仲間で、菌糸を伸ばして主にりん酸を吸収し植物に供給する。100種類を超える微生物資材が流通しているが政令で指定されているのは本資材のみである。これ以外資材は目的とする効果を確認する方法が明確でないため指定されるに至っていない。VA菌根菌が植物根に感染共生するには施用後3週間程度の期間が必要とされ、生育適温は20℃〜30℃ぐらいである。また、非共生植物や土壌の肥沃度が高い場合には効果が期待できない。


トップ > 農業技術センター > 技術情報 > 土壌肥料対策指針 > 3.土づくり用資材の特徴と施用法 3)土壌改良資材